重加算税が問題になる境界線―国外財産をめぐる実務判断

税理士
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国外財産調書の未提出や海外資産の申告漏れがあった場合、気になるのが「重加算税」の適用です。

単なるミスなのか、それとも隠したと判断されるのか。
この線引きは、実務上きわめて重要です。

本稿では、重加算税が問題となる境界線を整理します。


重加算税とは何か

重加算税は、仮装または隠蔽があった場合に課される加算税です。

通常の過少申告加算税よりも税率が高く、税務上の評価も厳しくなります。

ポイントは、「結果」ではなく「行為」です。
意図的に事実を隠したかどうかが判断軸になります。


国外財産に関連して問題になりやすい場面

1 海外口座の存在自体を申告していない

CRSで把握可能な海外口座を、申告書や国外財産調書に一切記載していない場合、説明が必要になります。

単なる失念か、意図的な不記載かが問われます。

2 国外財産調書を提出していない

提出義務があるにもかかわらず未提出であり、さらにそこから生じる所得も未申告であれば、評価は厳しくなります。

3 名義を分散している

家族名義や第三者名義に形式的に移している場合、実質帰属との関係で仮装と評価される可能性があります。

4 虚偽説明

調査時に海外資産の存在を否定するなど、事実と異なる説明をした場合、重加算税の根拠となり得ます。


重加算税になりにくいケース

すべてが重加算税になるわけではありません。

例えば、

  • 制度自体を誤解していた
  • 記載方法を誤った
  • 円換算を誤った

といったケースでは、仮装・隠蔽の認定は容易ではありません。

重要なのは、隠そうとする積極的行為があったかどうかです。


判断の分岐点

実務上の分岐点は、次のような点にあります。

1 意図的な資料隠匿があったか
2 調査前に自主的な修正を行ったか
3 記録や証拠が保存されているか
4 説明が一貫しているか

特に、調査開始前の自主的修正は重要な要素になります。


国外財産調書との関係

国外財産調書の未提出は、それ自体で直ちに重加算税になるわけではありません。

しかし、

  • 未提出
  • 所得未申告
  • 調査時の不誠実な対応

が重なると、仮装・隠蔽の認定につながる可能性があります。

調書は「透明性の証拠」にもなり得ます。


相続税との関係

相続税でも、海外資産を意図的に除外して申告したと判断されれば、重加算税が問題になります。

生前から国外財産調書が適正に提出されている場合、意図的隠蔽の評価を弱める事情となることがあります。


中小企業オーナーの注意点

オーナー経営者の場合、

  • 海外法人持分
  • 海外子会社
  • 関連当事者取引

が絡むため、実質帰属や資金移動の説明が複雑になります。

帳簿や契約書の整備が不十分だと、意図的隠蔽と誤解される余地が生じます。


実務対応の基本姿勢

重加算税を避けるために重要なのは、

1 事実を正確に把握する
2 証拠を整理する
3 説明を一貫させる
4 必要に応じて自主的に修正する

ことです。

隠す行為が最もリスクを高めます。


結論

重加算税の境界線は、「ミス」か「隠蔽」かにあります。

海外資産があること自体は問題ではありません。
問題となるのは、意図的に事実を隠す行為です。

国際的な情報交換が進むなかで、隠し続ける前提は成立しません。

透明性を前提とした管理と、早期の是正対応が、実務上の最も重要な防御策となります。


参考

税のしるべ
「6事務年度の租税条約に基づく情報交換事績、過去最多のCRS情報を受領」
2026年2月9日付


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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