配偶者居住権は2020年に施行された比較的新しい制度です。
創設の趣旨は明確でした。
残された配偶者の住まいを守りつつ、相続分の柔軟な調整を可能にすること。
しかし、制度が創設された後も、実務上の利用は限定的と指摘されています。
では、配偶者居住権は将来見直される可能性があるのでしょうか。
本稿では、制度の定着状況と修正の可能性を検討します。
制度創設の背景
配偶者居住権は、高齢化の進展を背景に創設されました。
従来は、
・自宅を取得すれば他の財産を取得できない
・金融資産を優先すれば住まいが不安定になる
という問題がありました。
このジレンマを解消するため、所有権と居住権を分離する仕組みが導入されました。
制度趣旨自体は、現在も妥当性を有しています。
利用状況と評価
制度施行後の実務では、利用件数は限定的といわれています。
主な理由は、
・評価方法の複雑さ
・将来処分の制約
・相続人間の調整の難しさ
・制度理解の不足
などです。
制度としては整備されていても、実務上のハードルが一定程度存在します。
見直しの方向性はあるか
制度が見直される場合、次のような方向性が考えられます。
1. 評価方法の簡素化
現在の評価は余命や耐用年数に基づく計算です。
これをより簡素化する議論は理論上あり得ます。
2. 処分制限の緩和
住み替えなどの柔軟性を高めるため、一定条件下での処分を容易にする設計も考えられます。
3. 周知・運用面の整備
制度そのものよりも、実務運用やガイドラインの整備が進む可能性があります。
見直しの可能性は高いか
現時点で、抜本的な制度改正の議論が顕在化しているわけではありません。
制度創設からまだ年数が浅く、評価が固まっていない段階といえます。
一般に、相続制度の改正は社会的影響が大きいため、慎重に行われます。
したがって、短期的に大幅な改正が行われる可能性は高いとはいえません。
実務からの圧力
もっとも、実務上の利用が広がらなければ、制度の見直し論は徐々に高まる可能性があります。
特に、
・制度が複雑で使われない
・想定外のトラブルが発生する
・二次相続で不均衡が生じる
といった事例が蓄積されれば、制度修正の議論は現実味を帯びます。
制度は運用実績によって評価されます。
老後設計との関係
配偶者居住権は、老後設計と強く結びつく制度です。
住まいの安定という価値は今後も重要性を増します。
その意味で、制度の基本理念が否定される可能性は低いと考えられます。
見直しがあるとすれば、「廃止」ではなく「運用改善」や「調整」の方向である可能性が高いといえます。
制度利用の姿勢
制度の将来動向にかかわらず、実務上重要なのは、
・生活設計を優先する
・流動性を確保する
・二次相続まで視野に入れる
という基本原則です。
制度はあくまで手段であり、目的ではありません。
配偶者居住権も、老後設計の一要素として冷静に位置付けることが重要です。
結論
配偶者居住権が将来見直される可能性は否定できません。
しかし、制度の基本理念が大きく変更される可能性は高くありません。
仮に見直しが行われるとしても、評価方法の簡素化や運用面の改善といった調整的改正にとどまる可能性が高いと考えられます。
制度の動向に過度に左右されるのではなく、老後設計と承継設計を総合的に考える姿勢が求められます。
制度は変わる可能性がありますが、生活設計の基本原則は変わりません。
参考
・自由民主党・日本維新の会 令和8年度税制改正大綱
・財産評価基本通達
・最高裁令和4年4月19日判決 解説資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
