「106万円の壁」撤廃や「20時間の壁」の議論は、現役世代の就労環境を大きく変えます。
同時に、退職後の生活設計を支える制度――退職金や年金――についても、抜本的な見直しが進められています。
背景にあるのは、
- 転職・副業の増加
- 非正規雇用の拡大
- 高齢化による支え手不足
従来の「終身雇用+退職金+厚生年金」というモデルは揺らぎ、制度改革が避けられない状況です。
退職所得控除の見直し
厚生労働省が検討しているのが、退職所得控除の縮小です。
現行制度では、勤続20年を超えると控除額が大幅に増える仕組みになっています。
- 20年まで:40万円×勤続年数
- 20年超:70万円×勤続年数
しかし、転職が当たり前の時代に「長期勤続優遇」が不公平だとの指摘があり、
20年超部分を70万円から40万円に引き下げる案が有力視されています。
これにより「転職を繰り返す人」と「一社で長く勤める人」の税負担差が縮小する可能性があります。
公的年金制度の課題
公的年金制度でも、次のような見直しが進んでいます。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)の拡充
2027年から掛金上限の大幅引き上げが決定 - 受給開始年齢の柔軟化
70歳超までの繰り下げ受給の選択肢拡大 - 第3号被保険者制度の見直し
扶養に依存しない形での保険料負担へ移行
「自分で備える年金」へのシフトが強まる一方で、最低限の生活保障をどう確保するかが焦点となっています。
企業年金の行方
企業年金制度も多様化が進んでいます。
- 確定給付型(DB):企業が将来の年金額を保証
- 確定拠出型(DC):従業員が運用次第で将来額が変動
- 選択制企業年金:給与の一部を年金掛金に振り替える
今後は、**「企業が責任を負う年金」から「個人が選択・運用する年金」**へと移行が進むと見込まれます。
ライフプランへの影響
こうした制度改革は、私たちのライフプランに直結します。
- 「退職金で老後資金を準備する」発想から、「複数の制度を組み合わせる」発想へ
- 公的年金だけに頼らず、iDeCo・NISA・企業年金をどう活用するかが重要に
- 転職や副業を前提に、退職所得控除や年金制度の仕組みを理解しておくことが不可欠
まとめ
退職金や年金制度は、これから 「長期勤続優遇」から「多様な働き方に対応する制度」へと移行していきます。
- 退職所得控除の見直しで転職世代に公平感
- 公的年金は最低保障+自助努力の組み合わせへ
- 企業年金は「選択と自己責任」の色合いが強まる
「老後資金は退職金と年金で安心」という時代は終わりつつあります。
今後は “自分で制度を組み合わせて老後を設計する力” がますます求められるでしょう。
👉 次回は、これらの変化を踏まえて 「家計・ライフプランに必要な備え」 を具体的に考えていきます。
(参考 2025年9月6日付日経新聞朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
