――「人生100年時代」の資産活用入門(総集編)
「人生100年時代」と言われる今、60歳で定年を迎えたとしても、その後に30年〜40年の生活が続く可能性があります。
この長い時間を安心して過ごすために、退職後の資産運用は現役時代と同じ考え方では対応できません。
本シリーズでは、野尻哲史さんの著書『100歳まで残す 資産「使い切り」実践法』(日本経済新聞出版)を参考にしながら、退職後の資産ポートフォリオをどう設計すべきかを5回にわたって整理してきました。今回はその総まとめです。
第1回:退職後の資産ポートフォリオはなぜ見直しが必要か
- 現役時代と退職後では前提が違う
- 現役時代:給与収入があり、積立でリスクを取れる
- 退職後:収入が限られ、損失が生活に直結する
- 運用期間も短くなり、長期投資によるリスク軽減効果は薄れる
- 投資の目的が「増やす」から「減らさずに使う」に変化する
→ よって、退職を機にポートフォリオを見直す必要がある。
第2回:リスクを下げるための3つの視点
退職後の資産運用では「リスクをどうコントロールするか」が最も重要です。
- どうやって下げるのか
株式を減らし、債券や現金を増やす。 - どこまで下げるのか
生活費の数年分を安全資産で確保しつつ、一定の株式も残してインフレに備える。 - 加齢に応じて変えるのか
60代はある程度リスクを残し、70代・80代は徐々に安全資産比率を高める。
第3回:債券・バランス型投信をどう活用するか
- 債券の役割:安定性・利息収入・満期での元本返還
特に「個人向け国債」は退職後資産に適している。 - 債券投信:国内債券中心なら為替リスクを抑えやすい。
- バランス型投信:1本で複数資産に分散でき、取り崩しも簡単。
- ポートフォリオの例:
- 現金1,000万+債券2,000万+バランス投信1,000万
- → 安定と分散を両立できる組み合わせ。
第4回:投資対象を変えないという選択肢
- 投資対象そのものを変えずに、有価証券の比率 を下げる方法。
- 例:株式投信を減らし、現金比率を増やすだけでリスク調整。
- メリット:
- 売買コストや税負担が少ない
- 投資方針を維持できる
- デメリット:
- 保有する投信のリスクはそのまま残る
- 現状維持バイアスに陥る可能性
第5回:安心して退職後を過ごすために
- 資産寿命を意識する
100歳まで生きる前提で取り崩しを設計。 - 生活費の安全資産を確保する
3年分を現金・預金で用意し、残りを債券や投信で運用。 - 完璧を求めず、定期的に見直す
1〜2年ごとに配分を点検するだけで安心感は高まる。 - 資産を使うことを恐れない
お金は減らさないことよりも「生活を支えること」に価値がある。
まとめ:退職後の資産運用で大切なこと
- 目的を変える:「増やす」から「安心して使う」へ
- リスクを抑える:比率の調整・債券の活用・分散投資
- シンプルにする:少数の商品で管理し、取り崩しやすくする
- 定期的に点検する:状況に合わせて柔軟に調整
- 安心感を優先する:資産寿命を意識し、不安のない生活を目指す
退職後の資産運用は「大きな利益を狙う競争」ではなく、「安心して暮らすための仕組みづくり」です。
自分の資産状況・生活費・寿命の見通しに合わせて、現実的かつシンプルなポートフォリオを考えることが、人生100年時代を豊かに生きるための鍵となります。
(参考:日本経済電子版 2025年9月14日記事)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

