起業時の法人形態はどう選ぶか 株式会社か合同会社か、最新の判断軸を整理する

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起業を考える際、多くの人が最初に悩むのが法人形態の選択です。日本では、株式会社と合同会社が代表的な選択肢となります。
近年はスタートアップ支援策の拡充や、会社法の見直し議論などを背景に、株式会社と合同会社の制度的な距離は縮まりつつあります。一方で、両者の違いが完全になくなったわけではありません。
本稿では、最新の制度動向を踏まえつつ、起業時にどのような判断軸で法人形態を選ぶべきかを整理します。

これまでの典型的な選び方

従来は、次のような単純な整理がされることが多くありました。
将来的に上場や大規模な資金調達を目指すなら株式会社、身内中心で小さく始めるなら合同会社、という区分です。
しかし、実務が進むにつれて、単に「大きくするかどうか」だけでは判断できないケースが増えています。スピード感、コスト、ガバナンス、対外的な信用など、複数の観点を総合的に見る必要があります。

判断軸① 意思決定のスピード

合同会社は、定款設計次第で非常に迅速な意思決定が可能です。社員(出資者)が経営に直接関与し、書面や電子的な合意だけで意思決定が完結するケースも少なくありません。
一方、株式会社は株主総会や取締役会といった手続きが原則として必要です。ただし、株主総会の書面決議要件の緩和が検討されており、小規模・非上場の株式会社については、意思決定のスピード面で合同会社との差は縮小しつつあります。
スピードを最優先するか、一定の手続きを踏むことを前提とするかが、最初の判断ポイントになります。

判断軸② 資金調達と成長戦略

外部からの出資を受ける予定がある場合、株式会社が前提となる場面は依然として多くあります。株式という形で権利関係を整理しやすく、将来の上場やM&Aを見据えた設計がしやすいためです。
合同会社でも出資は可能ですが、社員権という仕組みは投資家にとって分かりにくく、実務上は敬遠されがちです。
最初は小規模でも、数年以内に本格的な資金調達を考えている場合には、初めから株式会社を選択する合理性があります。

判断軸③ 対外的な信用と取引実務

取引先や金融機関との関係では、いまでも株式会社の方が無難と感じられる場面があります。制度上は差がなくても、慣行として「株式会社=一般的な会社」という認識が残っているためです。
一方で、IT系や専門職系の事業では、合同会社であること自体が問題にならないケースも増えています。
自社の事業内容や主な取引先を想定し、「法人形態が取引に影響するか」を具体的に考えることが重要です。

判断軸④ コストと運営負担

設立時のコストや、設立後の運営負担も見逃せません。
合同会社は、設立費用が比較的低く、役員任期や公告義務といった負担もありません。形式的な手続きを簡素にしたい場合には有利です。
株式会社は、設立費用が高めで、定期的な役員改選や公告などの義務があります。ただし、これらはガバナンスを意識した運営につながる側面もあります。
「負担を減らすために合同会社を選ぶ」のか、「将来を見据えて最初から株式会社にする」のかは、経営者の考え方次第です。

判断軸⑤ 将来の組織とガバナンス

起業直後は一人または少人数であっても、将来的に経営と所有を分ける可能性があるかどうかも重要です。
合同会社は、出資者=経営者という前提に向いた制度です。
株式会社は、株主と経営者を分けることを前提に制度設計されており、組織が拡大した場合のガバナンス構築がしやすい特徴があります。
どのような組織像を描いているかによって、適した法人形態は変わります。

結論

起業時の法人形態選択に、唯一の正解はありません。
合同会社は、スピードと柔軟性、コスト面で優れた選択肢です。一方、株式会社は、資金調達や対外的信用、将来の組織拡大を見据えた制度設計がなされています。
最近の制度改正の動きにより、株式会社の実務負担は一部軽減されつつあります。これにより、「小さく始めるなら必ず合同会社」という単純な図式は成り立たなくなっています。
重要なのは、現在の規模ではなく、数年後の事業像を想定したうえで法人形態を選ぶことです。その判断が、後々の選択肢を広げることにも、逆に縛ることにもなり得ます。

参考

・日本経済新聞「新興の意思決定、迅速に 総会書面決議『9割賛成』に緩和」
・法務省 法制審議会資料(会社法関係)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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