金や銀を「資産の一部として持っておきたい」という人が増えています。
ただし、売却益や相続時の税金の扱いを理解していないと、思わぬ税負担につながることもあります。
この記事では、貴金属投資の税金を
① 売却時(譲渡所得)
② 購入時(消費税)
③ 相続時(相続税)
の3つに分けて整理します。
💰 1. 売却時 ― 譲渡所得として課税される
金や銀などの現物資産(地金・コインなど)を売ったときの利益は、
原則として 「譲渡所得」 に分類されます。
🔹 計算式
譲渡所得 = 売却価額 -(購入価額+手数料)
この利益が年間で 50万円を超えた場合に課税 されます。
| 区分 | 課税の対象 | 税率・取扱い |
|---|---|---|
| 金・銀の現物(地金・コイン) | 譲渡所得(総合課税) | 所得税+住民税(最大約45%) |
| 金・銀ETF | 上場株式等の譲渡所得 | 分離課税(約20.315%) |
| 投資信託(貴金属関連) | 分配金・譲渡益 | 同上(約20.315%) |
💡 ポイント:1年超の保有なら「長期譲渡」で有利
5年以内に売却すると「短期譲渡」、5年を超えると「長期譲渡」となり、
長期の場合は課税対象が利益の1/2になります(他の所得と合算)。
例)10万円の利益 → 5万円だけ課税対象に。
🪙 2. 購入時 ― 消費税がかかるのは「現物」だけ
金・銀の現物地金やコインを買う場合、
10%の消費税が課されます。
一方で、ETFや投資信託などの金融商品には消費税はかかりません。
| 取引形態 | 消費税の扱い |
|---|---|
| 地金・コイン | 課税対象(10%) |
| ETF・投資信託 | 非課税(金融商品) |
| 外国コイン(貨幣扱い) | 非課税の場合あり |
🔁 売却時はどうなる?
購入時に払った消費税は、売却価格にも含まれるため、
価格上昇で利益が出た場合は、消費税分も一緒に課税対象になります。
つまり、「税込みで売った利益」が譲渡所得の計算基準になる点に注意が必要です。
👨👩👧 3. 相続時 ― 相続税の対象になる
金や銀などの貴金属を保有したまま亡くなった場合、
相続財産として評価され、相続税の課税対象になります。
🔹 評価方法
相続開始時点(被相続人が亡くなった日の時価)で評価します。
地金商(例:田中貴金属工業)の当日公表価格などが基準です。
| 例 | 評価のしかた |
|---|---|
| 金地金100g × 当日価格9,000円 | = 90万円が相続財産に加算 |
評価額が相続人の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)を超えると、課税されます。
💡 コインやアクセサリーは?
アクセサリーやジュエリーは「動産」として扱われ、
市場価格や鑑定額をもとに評価します。
金貨(メイプルリーフ金貨など)は、貨幣ではなく貴金属扱いになる点に注意しましょう。
📄 4. 贈与でも課税対象になる?
家族に金地金を「生前贈与」した場合も、
110万円を超える部分は贈与税の対象になります。
また、金を渡すだけでなく、名義変更を伴わない譲渡(実質的に贈与)も課税対象になることがあります。
💡 裏技的な「名義分散」は税務調査で指摘されやすいので注意。
💡 5. 投資初心者が気をつけたい3つのポイント
1️⃣ 税金の対象は“利益”だけではない
→ 消費税や手数料も含めた「実際の損益」で判断すること。
2️⃣ 売買履歴を必ず保存
→ 税務署に聞かれたとき、購入証明がないと「取得価額ゼロ」とみなされ、
全額課税されることもあります。領収書・取引明細は保管必須。
3️⃣ 相続対策としても計画的に
→ 現物を持つなら、遺言や資産一覧に明記しておくとトラブル防止になります。
🌈 まとめ:「資産を守る」には税金も含めて考える
貴金属投資は、「インフレ対策」や「通貨リスクの分散」として注目されています。
ただし、税金まで含めて初めて“本当のリターン”が見えるということを忘れてはいけません。
🔸 売却益 → 譲渡所得(5年超は有利)
🔸 購入時 → 消費税がかかるのは現物のみ
🔸 相続時 → 時価で評価され、相続税の対象
金も銀も「資産防衛」の一方で、
税のしくみを理解してこそ、“守る力”を発揮する投資になります。
🪙 参考資料:
出典:国税庁「譲渡所得の課税関係」/「消費税の課税対象」/「相続税基本通達」
2025年10月17日 日本経済新聞朝刊「銀最高値、群がる投機資金」
田中貴金属工業・日本貴金属マーケット協会データ
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
