2025年度補正予算(総額18兆3034億円)は、物価高対策や成長投資などを含む大型の内容となりました。しかしその一方で、市場からは「財政の信認」を問う声が強まっています。
今回の記事では、大型補正が財政・市場に与える影響を中心に、次の2つの論点を整理します。
- 基礎的財政収支(PB)と債務残高GDP比
- 補正予算の巨大化と政治・市場の反応
政策の中身だけでなく、「それをどう見られているか」を押さえておくことで、財政・経済の全体像をより立体的に理解できます。
1 PB黒字化はどこへ向かうのか
政府はこれまで、国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)について、「2025〜26年度を通じて可能な限り早期に黒字化を目指す」としてきました。
ところが今回の大型補正と減税により、民間試算では次のような見通しが出ています。
- 2026年度は黒字予想から一転し赤字へ
- 補正予算と約2.7兆円規模の減税により、PBは10兆円前後悪化
- 最新の税収上振れを織り込んでも3兆円台半ばの赤字が残る見通し
一方で高市政権は、単年度のPB黒字よりも「債務残高対GDP比」の引き下げを重視します。この考え方は、名目GDPが成長すれば債務比率は低下するという発想にもとづきます。
ですがその前提には、「成長力の実現」が必要で、投じた財政支出がどの程度成長に結びつくのかは、今後の重要な焦点です。
2 市場は財政をどう見ているのか
2025年秋以降、長期金利が上昇基調にあります。新発10年物国債利回りは一時1.8%台へと上がり、2008年以来の水準に接近しました。
これは次のような市場の懸念を映しています。
- 補正の大型化で財政が再び拡張方向へ傾く
- 国債の増発懸念
- 防衛費や社会保障費の中長期的な増加圧力
- 金利上昇と円安の連動に対する警戒感
市場の信認は、数値目標だけでなく、政府の財政運営に対する姿勢を総合的に評価して形成されます。
3 補正予算の「平時の巨大化」という構造
補正予算は、本来「特に緊要となった経費の支出」に限る制度です。災害、景気急変など、当初予算では対応できない事態に備えた仕組みでした。
しかし近年は様相が変わりつつあります。
- 戦後、補正を編成しなかった年はゼロ
- コロナ対策を含む2020年度は合計73兆円
- 平時とされる2023年度以降も10兆円超が常態化
- 2025年度補正は約18.3兆円で、コロナ後最大規模
加えて、補正で計上した事業は年度内に執行されにくく、翌年度に持ち越されるケースが多いため、PB悪化の“構造要因”になりやすい面があります。
4 自民党内でもくすぶる財政懸念
表向きは「責任ある積極財政」を支持する声が多いものの、水面下では次のような懸念が語られています。
- 事業規模42兆円に対し「やり過ぎでは」との声
- 高市政権の人事で、財政規律派が影響力を持ちにくい構図
- 内閣支持率や市場動向次第で、財政論争が再燃する可能性
補正予算の規模が政治的な象徴と化しつつあることも、今後の政策運営を複雑にする要因です。
結論
2025年度補正予算の背景には、財政規模の拡大と成長投資路線をめぐる政治的な力学、そして市場の慎重な視線がありました。
PB悪化、国債増発懸念、長期金利の上昇。これらは、財政運営への評価が変化しつつあるサインでもあります。
補正予算の拡大そのものよりも、
「その財政支出が持続的な成長につながるかどうか」
が今後の論点となります。
税理士・FPとしては、金利、為替、国債市場の動きなど、クライアントや読者が不安を抱く領域について、丁寧に解説していくことが求められると考えます。
出典
- 日本経済新聞(2025年11月28日・29日 各朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

