認知症とマンション生活 〜成年後見制度・任意後見制度をどう活かす?〜

FP
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前回は、東京都が進める「マンション管理士」派遣事業や、認知症住民をめぐる課題について紹介しました。
今回はさらに踏み込み、認知症で判断力が落ちたときに、マンション生活にどんな影響があるのか?そして成年後見制度や任意後見制度がどう役立つのか? を、具体的な事例とともに考えてみましょう。


事例1:管理費・修繕積立金が滞納

あるマンションで、80代の一人暮らしの住人が認知症を発症しました。
銀行口座の管理ができなくなり、毎月の管理費や修繕積立金が未払いに。管理組合は督促を繰り返しましたが、当人は「払った」と思い込み、話がかみ合いません。

➡ こうした場合、成年後見制度を利用することで、後見人が本人の財産管理を代わりに行えます。管理費の支払いや必要な生活費の管理をスムーズに進められるのです。


事例2:大規模修繕工事での決議に参加できない

マンションでは10〜15年ごとに大規模修繕工事があります。その際には管理組合総会での決議が必要です。

ところが、ある高齢の住人が認知症で判断力が低下しており、

  • 修繕の必要性を理解できない
  • 議案に反対し続けて話が進まない

という問題が起きました。

任意後見制度を事前に結んでおけば、信頼できる人が本人に代わって意思決定を支援できます。特に「マンションという共有財産」に関わる意思決定は、住民全体に影響するため、早めの備えが重要です。


事例3:住まいを売却したいが契約できない

「介護施設に入るため、持ちマンションを売って資金を用意したい」というケース。
しかし、本人が認知症で判断能力が不十分になってしまうと、売買契約が無効になるリスクがあります。

➡ 成年後見制度を利用すれば、後見人が代わって売却手続きを進めることができます。
➡ 一方で、売却の自由度が制限されることもあるため、柔軟性を重視するなら家族信託任意後見契約を事前に準備しておくことが望ましいです。


制度のポイントを整理

  • 成年後見制度
    認知症の発症後に家庭裁判所が後見人を選任する制度。確実に財産管理を代行できる反面、自由度は低め。
  • 任意後見制度
    元気なうちに信頼できる人と契約しておく制度。将来に備えて「どこまで任せるか」を決められるのが特徴。

どちらの制度も、マンション生活に直結する 管理費の支払い・修繕の決議・売却時の契約 といった場面で力を発揮します。


FP・税理士からのアドバイス

  • マンションに住む高齢者は、財産管理と住まいの管理が一体になっていることを意識する
  • 早い段階から「任意後見契約」や「家族信託」を検討しておく
  • 管理組合側も、住民に制度の周知を進めることがトラブル予防につながる

まとめ

マンション生活において認知症は、個人の生活課題にとどまらず、建物全体の運営や資産価値にも関わる問題です。

成年後見制度や任意後見制度は、こうしたトラブルを防ぐための有効なツール。
「まだ元気だから大丈夫」と思わず、早めに制度を理解し、準備しておくことが安心につながります。


📌次回(第3回)は、「家族信託を活用したマンション・財産管理」 を事例とともに解説します。


📌 参考 日本経済新聞朝刊(2025年9月26日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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