証券営業、AI不可欠に(証券会社の営業DXと人材の未来)

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証券会社の営業現場で人工知能(AI)の導入が急速に広がっています。これまで経験や勘に依存していた商品提案や顧客戦略の立案が、データとAIによって再構築されようとしています。新NISAの拡大で投資家層が広がるなか、営業担当者が効率よく顧客ニーズを把握することは競争力の源泉になっています。今後の証券営業はどのように変わっていくのでしょうか。

大和証券:AIが“営業戦略そのもの”を指南

大和証券は複数の支店で、営業戦略をAIが提示する仕組みを導入しました。
過去の成約率、顧客属性、官公庁の統計などをAIに学習させ、推奨商品や営業重点地区を自動的に割り出します。

例えば、地域の貯蓄率と金融資産の関係、主要産業の業況、企業の財務上のリスクなどを解析し、それぞれの支店に最適な提案戦略を提示します。
従来は営業担当者の得意分野や経験値に左右されることも多かった商品提案が、データによって標準化されていく点が特徴です。

実際に先行導入した店舗では、提案商品の成約率が向上したといいます。今後は約100店舗へ順次展開する計画で、証券営業の意思決定プロセスが大きく変わる可能性があります。

SMBC日興証券:AIが顧客情報を要約

SMBC日興証券では、顧客属性データや市況情報を踏まえて、AIが各顧客の情報を要約する仕組みを開発しています。営業員だけでなく、管理職が同行訪問する際の準備にも活用できる設計です。

インターネット上の情報も分析対象に含めており、顧客の投資姿勢や関心分野を立体的に把握できるようになります。2026年初の全店稼働を目指しており、営業活動の“情報整理の負荷”が大幅に軽減される見通しです。

みずほ証券:提案トークの台本までAIが生成

みずほ証券は、顧客情報に株式・為替・国債などの相場データを組み合わせ、提案の方向性や営業トークの台本まで生成するAIを試験運用しています。
営業担当者が「次にどのような話をすべきか」を具体的に示すことで、提案の質とスピードを一気に高める狙いがあります。26年度上期の導入が計画されています。

海外:JPモルガン、ブラックロックが先行

海外ではすでにAI活用が営業・運用業務に深く入り込んでいます。

  • JPモルガンのAIアシスタント
    一般的な文書作成から、運用提案の準備までワンプラットフォームで処理します。
  • ブラックロックのアラディン・ウェルス
    AIを搭載し、100通り以上の市場シナリオに基づき資産のリスク量を瞬時に可視化します。

証券会社の業務は国際的に高度化しており、日本の営業現場も同じ方向へ向かっています。

野村HD×OpenAI:業界の地殻変動

野村ホールディングスは米オープンAIとの連携を発表しました。自社のAI基盤の上に、顧客調査や市況分析をAIで処理する新しいワークフローを整備していく構想です。
証券業界におけるAI活用は、単なる効率化ではなく、“営業モデルの再設計”という段階に入ったと言えます。

なぜ、ここまでAIが不可欠になったのか

背景には三つの大きな流れがあります。

  1. 新NISAの常態化で顧客数が増加
    少額から投資を始める層が増え、営業担当者1人あたりの顧客情報量が急増しました。
  2. 商品ラインナップの多様化
    株式・投信だけでなく、プライベートアセットやオルタナティブ運用など、複雑な商品が広がっています。
  3. 顧客が求める情報レベルの高度化
    市場環境の変化が速く、顧客が必要とする情報の質も高まっています。人力で全てを補うには限界があります。

谷口栄治・日本総研主任研究員は「営業担当者が効率的に顧客にリーチするためにもAI活用は欠かせない」と指摘しています。

証券営業は“人×AI”の時代へ

AIが戦略立案・情報要約・トーク作成まで担うようになっても、営業活動の中心が人間である点は変わりません。
しかし今後は以下のような能力が求められる時代になります。

  • AIが出した提案を“顧客にどう伝えるか”という説明力
  • 顧客の本音を読み取るヒアリング力
  • AIに正しい質問を投げて、適切なアウトプットを引き出す力
  • 予測不能な市場局面での判断力

証券営業は、人間の判断力とAIの分析力が融合する専門職へと進化していきます。

結論

証券営業におけるAI活用は、これまでの「資料作成の効率化」から「戦略立案・顧客提案の中核機能」へと大きく進化しています。新NISAで市場に参入する投資家が増える中、顧客ニーズを正確に把握し、的確なタイミングで提案するためのAI活用は不可欠になりつつあります。
営業担当者には、AIが示す分析結果を理解し、顧客に寄り添う形で活用する能力が求められます。証券営業は“AIを使いこなすことで価値が高まる仕事”へと変わりつつあります。

参考

・日本経済新聞「証券営業、AI不可欠に」(2025年12月12日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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