政府は産業競争力強化法の改正により、大規模な設備投資を行う企業に対して税制優遇措置を設ける方針を示しました。
投資額の7%を法人税額から控除する税額控除や、設備投資額を初年度に費用計上できる即時償却などが想定されています。
設備投資減税は、企業の国内投資を促す政策として繰り返し導入されてきました。しかし実務の現場では、制度があっても実際には利用できない企業が少なくないという指摘があります。
なぜ設備投資減税は、思ったほど広く活用されないのでしょうか。本稿では、その背景にある制度上の特徴を整理します。
制度の対象が大規模投資に偏りやすい
設備投資減税は、多くの場合、一定規模以上の投資を対象とする制度として設計されています。
今回の制度でも、経済産業大臣による投資計画の確認が必要とされる予定です。これは政策として重点分野への投資を誘導する狙いがありますが、その結果として制度の対象は大規模な投資計画を持つ企業に限られやすくなります。
半導体工場やデータセンターなどの分野では数百億円規模の投資が行われることもありますが、こうした投資を実行できる企業は限られています。中小企業にとっては制度の対象そのものに入りにくい場合もあります。
利益が出ていない企業は税額控除を使えない
設備投資減税の代表的な制度は税額控除です。
税額控除は法人税額から直接差し引く制度であるため、企業に十分な利益があり法人税が発生していることが前提となります。もし赤字であれば、控除する税額そのものが存在しないため、制度を利用することができません。
設備投資を行う企業の中には、成長段階にある企業や、新規事業への投資を行っている企業もあります。こうした企業は利益が安定していない場合も多く、税額控除の恩恵を受けにくいという問題があります。
制度の手続きが複雑になりやすい
設備投資減税は、産業政策と結び付けて設計されることが多いため、手続きが複雑になる傾向があります。
投資計画の提出や、対象設備の確認、報告義務などが設けられる場合もあります。こうした手続きは制度の適正な運用のために必要ですが、企業にとっては事務負担となることがあります。
特に中小企業では、制度の内容を理解し、必要な手続きを進めるための体制が十分でない場合もあります。その結果、制度があっても利用されないケースが生じることがあります。
税制だけでは投資判断は変わらない
企業が設備投資を決定する際には、税制だけでなく多くの要因が影響します。
市場の需要、技術動向、資金調達環境、為替や金利など、企業の投資判断にはさまざまな要素が関係します。そのため、税制優遇があったとしても、それだけで投資が大きく増えるとは限りません。
設備投資減税は投資判断の決定要因というより、投資を行う企業を支援する政策として位置付けられることが多くなっています。
制度が大企業中心になりやすい理由
設備投資減税が結果として大企業中心の制度になりやすいことも指摘されています。
大規模投資を行える企業は限られており、利益水準も高いため税額控除を利用しやすい傾向があります。一方で、中小企業は投資規模が小さいことや利益が安定していないことから、制度の恩恵を受けにくい場合があります。
こうした構造のため、設備投資減税は政策として導入されても、実際の利用は一部の企業に集中することがあります。
結論
設備投資減税は、企業の国内投資を促す政策として繰り返し導入されてきました。しかし制度の対象や仕組みの特徴から、実際には利用できる企業が限られる場合もあります。
大規模投資を行う企業や、利益が安定している企業にとっては有効な制度ですが、すべての企業が活用できるわけではありません。
設備投資減税の効果を考える際には、制度そのものだけでなく、どの企業が実際に利用できるのかという視点も重要になります。
参考
日本経済新聞
2026年3月7日朝刊
設備投資で減税、法案を閣議決定 7%税額控除など
