東京商工リサーチの担当者は、「消費税の滞納は仕組み上、避けられない」と指摘しています。これは極めて重い言葉です。
消費税は「消費者が支払い、事業者が預かり、後で納付する」構造です。この流れそのものが、滞納リスクを内包しています。
- 赤字でも課税されるため、キャッシュが不足しやすい
- 納付までのタイムラグで「一時的に使えるお金」が生まれる
- 納付回数が少ない小規模事業者ほど、滞納額が大きく膨らむ
つまり、制度設計上「滞納ゼロ」は原理的に難しいのです。
毎月納付という選択肢
こうした状況を受け、税理士団体(TKC全国政経研究会)は「すべての事業者に毎月納付を義務づけるべき」と提言しています。
メリット
- 預かり金を手元に置く期間が短くなる
- 資金流用のリスクを減らせる
- 納税意識が高まる
デメリット
- 小規模事業者に過大な事務負担
- 毎月の資金繰り調整がさらに厳しくなる
現実的には、デジタル化を前提とした簡素な「毎月納付システム」や、AIによる自動仕訳・自動納付などをセットで整備しない限り、小規模事業者には酷な制度になる可能性があります。
自治体の滞納が示す「二重の不信」
東京都が都営住宅事業で 21年間も未納 していた事実は、制度の信頼性を大きく傷つけました。
- 徴収する側が守らなかったという「不信」
- 時効によって過去分が免除されたという「不公平感」
これは単なる会計上のミスではなく、「国民に厳しく徴収する一方で、自治体は自らを律しなかった」という二重の不信につながります。
この事例は、消費税の公平性や執行の厳格さを根底から問い直すものです。
消費税は社会保障財源の柱
消費税は2024年度、国の税収として約 25兆円 にのぼり、所得税や法人税を上回っています。その多くは医療や介護などの社会保障に充てられています。
一方で、国民の生活感覚としては「負担ばかり重い」「本当に社会保障に使われているのか分からない」という不信感が根強いのも事実です。
つまり、「集め方」と「使い方」両方の信頼回復 が求められています。
今後に向けての提言
今回の記事を補足する形で、改めて課題と提言を整理します。
- 納付回数の見直し
- AI・クラウド会計の普及を前提に、毎月納付またはリアルタイム納付の仕組みを検討すべき。
- 分納制度の柔軟化
- 一時的に資金難に陥った中小企業が倒産しないよう、分納・延納を利用しやすくする仕組みを整備。
- 透明性の確保
- 消費税がどの分野にいくら使われているのか「見える化」することで、国民の納得感を高める。
- 徴収側の責任強化
- 自治体のような公的機関においても厳格な監査を導入し、滞納を防ぐ。
まとめ
「消費税のリアル」とは、単なる税制議論ではなく、社会の信頼をめぐる問題です。
- 滞納は仕組み上、避けられない
- 企業の倒産リスクを高め、自治体の未納は信頼を揺るがす
- 社会保障財源として不可欠である以上、制度改善と透明性の確保が急務
消費税は「薄く広く国民が負担する税」です。だからこそ、国や自治体が率先して公平性と透明性を高める努力をしなければなりません。そして私たち国民も「ただ払うだけ」ではなく、「どう使われているか」に目を向けることが、より良い制度への第一歩となるのではないでしょうか。
📖参考
「消費税のリアル(上)滞納ドミノ、年5000億円」日本経済新聞(2025年9月30日 朝刊)
記事はこちら
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
