次期衆院選に向け、自民党が公表した公約原案が注目を集めています。
衆院議員定数の1割削減と、食品の消費税を2年間ゼロにする方針が柱として掲げられました。
一見すると、政治改革と生活支援を同時に打ち出す分かりやすい構図に見えます。しかし、税制・財政の視点で丁寧に読み解くと、制度設計の難しさや今後の論点も浮かび上がってきます。
本稿では、今回の公約原案を材料に、
・衆院定数削減の意味
・食品消費税ゼロが家計と制度に与える影響
・給付付き税額控除や積極財政との関係
について整理していきます。
衆院定数1割削減は何を狙うのか
衆院定数の削減は、長年繰り返し議論されてきたテーマです。今回の原案では、選挙後に開く次期国会で法案成立を目指すと明記されました。
定数削減の主な狙いは、政治のスリム化と国会運営への信頼回復です。歳費削減による財政効果は象徴的な意味合いが強いものの、有権者に対する説明責任を果たす姿勢を示す効果はあります。
一方で、注意すべき点もあります。
定数削減は、単純に議員数を減らせばよい話ではありません。選挙区の再編や一票の格差、地方の代表性の確保など、制度全体の見直しが不可欠です。削減ありきで進めると、地方の声が届きにくくなるという逆効果も生じかねません。
食品消費税2年ゼロのインパクト
今回の公約で最も生活に直結するのが、食品消費税を2年間ゼロにする方針です。
物価高が続く中、食費の負担軽減を狙った政策であることは明らかです。
ただし、税制実務の観点ではいくつかの論点があります。
第一に、ゼロ税率と非課税の違いです。
食品を非課税にするのか、ゼロ税率とするのかで、事業者の仕入税額控除の扱いが大きく変わります。制度設計を誤ると、食品関連事業者の税負担がかえって増える可能性があります。
第二に、期限付き措置である点です。
2年後に元に戻ることを前提とした場合、事業者側はレジ設定や請求書様式を短期間で変更し、再度戻す必要があります。特に中小事業者や個人事業主にとって、事務負担は決して軽くありません。
第三に、家計への効果の偏りです。
食品消費税ゼロは、所得に関係なく恩恵が及ぶため、相対的には高所得世帯にも同じ割合で効果があります。真に中低所得者の負担軽減として十分かどうかは、冷静に検証する必要があります。
給付付き税額控除との関係
公約原案では、給付付き税額控除の制度設計を進める方針も示されています。
これは、税額控除だけでは恩恵を受けにくい低所得者層に対し、給付を組み合わせる仕組みです。
本来、給付付き税額控除は、消費税の逆進性を補うための制度として位置付けられるものです。
その意味では、食品消費税ゼロよりも、よりターゲットを絞った支援策と言えます。
問題は、両者を同時に進める場合の整合性です。
食品消費税ゼロを先行させ、その後に給付付き税額控除を本格導入するとなると、制度が重なり合い、分かりにくさが増します。税と給付をどう組み合わせるのか、全体像の提示が不可欠です。
責任ある積極財政と市場の視線
公約では、責任ある積極財政という言葉も強調されています。
新たな予算枠を設定し、税収増などを示した上で、複数年度にわたる機動的な財政出動を可能にする考え方です。
ここで重要なのは、市場の信認を条件としている点です。
財政拡張そのものよりも、どのようなルールで、どこまで行うのかが問われています。長期金利の動向や国債市場の反応を無視した財政運営は、結果的に家計や企業の負担増につながります。
税制改正と財政政策は、選挙のための短期的な打ち出しではなく、中長期の整合性が不可欠です。
結論
今回の公約原案は、有権者の関心が高いテーマを的確に押さえた内容です。
しかし、衆院定数削減も食品消費税ゼロも、実行段階では制度設計の難しさが伴います。
重要なのは、分かりやすさと持続可能性の両立です。
一時的な負担軽減だけでなく、その後の税制・社会保障の姿まで含めて説明できるかどうかが、今後の政治に問われるポイントと言えるでしょう。
参考
・日本経済新聞
衆院定数減、次期国会で 自民公約原案(2026年1月20日夕刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

