2025年9月22日に告示された自民党総裁選。
立候補に必要な推薦人20人をどう確保したかは、各候補の党内基盤を映し出す鏡です。派閥が形式上は解消された後も、人脈やつながりは健在であり、候補者ごとに色合いが異なります。今回は推薦人分析から見える「支持の地図」を整理します。
1. 総裁選と推薦人の意味
自民党総裁選への立候補には、党所属国会議員20人の推薦が必要です。
今回、投票権を持つ国会議員は295人。そのうち約3割の100人がいずれかの推薦人に名を連ねました。
推薦人は単なる手続き要件ではなく、候補者の「党内の足腰」を示す重要な材料です。派閥が解消された今、旧派閥や地域基盤のネットワークがどう機能しているのかが浮き彫りになります。
2. 候補者別の特徴
茂木敏充氏 ― 旧茂木派に依拠
- 推薦人の約3分の2を旧茂木派出身者が占める。
- 自らの出身基盤に強く依存しており、派閥色が最も濃厚。
- 栃木選出の議員が複数含まれるなど地元色も反映。
林芳正氏 ― 旧岸田派と無派閥が柱
- 旧岸田派から8人を確保。
- 同時に無派閥議員が9人と最多で、幅広い人脈を形成。
- 参院議員の比率も高く、参院基盤の厚さが特徴。
高市早苗氏 ― 旧安倍派・麻生派との結束
- 麻生派と旧安倍派から6人ずつ。
- 旧二階派からも5人を取り込むなど、幅広く支持を獲得。
- 「安倍晋三元首相の遺志を継ぐ」というメッセージを体現。
- 前回総裁選で推薦人に不祥事議員が多かったが、今回はゼロに。クリーンな布陣に刷新。
小泉進次郎氏 ― 幅広いが旧安倍派ゼロ
- 5つの派閥・旧派閥からバランスよく集めた。
- ただし旧安倍派からは1人もいないのが特徴。
- 推薦人の平均年齢は61.3歳と最も高く、若手候補ながら支持層はベテラン中心。
- 神奈川選出の議員が4人含まれ、地元基盤の強さが見える。
小林鷹之氏 ― 世代交代を象徴
- 麻生派、旧安倍派、旧茂木派、旧二階派から幅広く集める。
- 推薦人の平均年齢は53.3歳と最も若く、「世代交代」を掲げる本人の姿勢を裏付ける。
- 千葉選出議員が4人含まれ、地域の結束も鮮明。
3. 女性推薦人の存在感
前回の総裁選では女性推薦人がゼロの候補もいましたが、今回は5候補すべてに女性議員が名を連ねました。
- 最多は高市氏の5人。女性登用を公約に掲げた姿勢を体現。
- 他候補も1~3人の女性推薦人を含み、ジェンダーバランス意識が反映されています。
4. 推薦人から見える「派閥解散後」の現実
形式上は派閥が解消された自民党ですが、推薦人の顔ぶれを見ると旧派閥の影響はなお健在です。
- 茂木氏:派閥依存型
- 林氏:無派閥・参院重視型
- 高市氏:安倍派・麻生派ネットワーク活用型
- 小泉氏:広範だが安倍派不在型
- 小林氏:若手・世代交代型
この構図は決選投票での票の流れに大きく影響しそうです。旧派閥を軸にした連携や地域単位での結束が、最終的な勝敗を左右する可能性があります。
5. まとめ
推薦人分析から見えてくるのは、候補者ごとの「党内の立ち位置」です。
- 派閥依存か、広範な人脈か
- 世代交代を訴えるのか、ベテラン中心の支持か
- 地域基盤の結束度はどれくらいか
総裁選は表舞台での政策論争だけでなく、水面下での推薦人や旧派閥人脈の動きによっても左右されます。
10月4日の投開票に向け、各候補がどこまで支持基盤を広げられるかに注目が集まります。
📌 補足コメント(税理士FP視点)
一見「政治部内の話」に思える推薦人の分析ですが、実は税制改正や規制改革に大きく影響します。例えば、財政規律を重視する議員が多ければ増税議論が進みやすく、積極財政派が多ければ中小企業支援や減税が手厚くなる可能性があります。税理士・FPとしては「誰がどの陣営にいるか」を知っておくことが、将来の制度改正を予測するヒントになります。
📌 参考記事(2025年9月23日 日本経済新聞)
- 「推薦人、『派閥』色に濃淡」
- 「自民総裁選、経済・政治再生競う 5氏出馬」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
