自民党総裁選2025補足編:社会保険料負担と税のバランスを考える

政策

自民党総裁選の論戦では、物価高対策として「所得税減税」が大きく取り上げられています。しかし、実際の家計負担を数字で見てみると、税よりも社会保険料の重さが際立ちます。ここにこそ、本当の意味での「生活支援」や「働き方改革」の余地があるのではないでしょうか。


1. 税より重い社会保険料の実態

例)年収500万円・単身世帯の場合

  • 所得税:約14万円
  • 住民税:約24万円
  • 社会保険料:約72万円

📌 所得税と住民税の合計より、社会保険料がはるかに大きな負担となっています。
中低所得層でも定額的にかかるため「累進性がない」という課題が指摘されています。


2. 総裁選候補の発言

  • 高市早苗氏:「累進制のない社会保険料が中低所得層に重くのしかかっている」と問題提起。
  • 小林鷹之氏:「能力のある高齢者には負担してもらうべき」と世代間の公平性を強調。
  • 茂木敏充氏:「社会保障の効率化を徹底的に検証する」と述べたものの、具体的な制度改革案には至らず。

所得税減税や基礎控除の拡大に比べ、社会保険料負担の改革はまだ十分に議論されていないのが実情です。


3. なぜ社会保険料の議論が進みにくいのか

  1. 税と違って定率的に徴収される
     所得が増えれば負担も増えるが、低所得層の割合負担が相対的に重くなる。
  2. 社会保障制度との直結
     医療・年金・介護・雇用保険など、生活の基盤に直結するため「削減=制度縮小」と受け取られやすい。
  3. 政治的リスク
     税制改革に比べて影響範囲が広く、有権者の反発を招きやすい。

4. 税と社会保険料のバランス

税制と社会保険料は「二重の負担」として家計にのしかかっています。

  • 所得税・住民税:累進課税により高所得者が多く負担。
  • 社会保険料:年収に応じて定率負担。低所得層にも重い。

📌 FPの視点

  • 家計にとって「どちらの負担が重いか」を把握することが重要。
  • 高齢化で社会保障費は増え続けるため、税だけでなく「保険料軽減策」も不可欠。
  • 例えば「基礎年金部分の税方式化」「医療給付効率化」などが、長期的に議論されるべきテーマです。

5. 将来の改革の方向性

今後の議論で考えられる方向は次のとおりです。

  • 給付付き税額控除との組み合わせ
     低所得層には「税+給付」で支援し、社会保険料の逆進性を緩和。
  • 高齢者負担の見直し
     一定所得以上の高齢者に追加負担を求め、世代間の公平を確保。
  • 制度効率化
     マイナンバーを活用し、給付と負担の一元管理を進める。

6. まとめ ― 税理士FPとして伝えたいこと

総裁選で注目される「所得税減税」は、家計に一時的な支援をもたらします。
しかし、実際の生活にとって大きな負担は社会保険料であり、この議論を避けては本質的な家計支援になりません。

  • 家計管理の視点からは「税額だけでなく保険料負担も合わせて確認する」こと。
  • 老後資金やライフプランの設計では「社会保険料が増えるリスク」を織り込むこと。
  • 政策ウォッチでは「減税よりも保険料負担軽減に踏み込む候補者が出るか」が重要なポイントです。

📌 参考記事(2025年9月26日 日本経済新聞朝刊)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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