自民党総裁選と「物価高対策」―各党の看板政策と財源の現実

FP

物価高が続く中、自民党総裁選では「暮らしを守る」政策が次々と掲げられています。野党の主張を取り込む候補も目立ち、ガソリン税や所得税控除、消費税減税、給付金、教育費無償化といったメニューが並びます。
しかし、こうした政策を全て実行しようとすれば、単純合算で11兆円以上の財源が必要になります。税収の「上振れ」だけでは到底まかないきれず、選択と優先順位付けが避けられません。


ガソリン税の「上乗せ」廃止

  • 必要財源:約1兆円(軽油も含めると1.5兆円)
    ガソリン税には「旧暫定税率」と呼ばれる上乗せ部分(1リットル25.1円)があり、軽油にも17.1円の上乗せがあります。
    導入は道路整備財源不足がきっかけでしたが、2009年に一般財源化しても残ったまま。廃止となれば家計負担の軽減効果は大きい一方、国や自治体の歳入が減少します。

所得税の「年収の壁」見直し

  • 必要財源:最大1.7兆円規模
    現在は103万円を超えると所得税がかかる「年収の壁」。2025年度税制改正では最大160万円まで引き上げが検討されています。
    さらに国民民主党は「所得制限なく178万円まで」と訴えています。大和総研の試算では、基礎控除を一律113万円とすれば1.7兆円の税収減。就労促進にはつながるものの、規模は小さくありません。

消費税の減税案

  • 立憲民主党案:食料品ゼロ税率 → 約5兆円
  • 国民民主党案:税率一律5% → 約15兆円
    最もインパクトの大きい政策が消費税減税です。ただし財源規模も桁違い。消費税は医療・介護など社会保障財源の柱であり、代替財源の確保が前提になります。財務省・内閣府は「一度下げれば戻すのは難しい」と強い警戒感を示しています。

現金給付

  • 必要財源:約3.3兆円
    自民・公明が参院選で打ち出したのは一人2万円の現金給付(子どもと住民税非課税世帯には追加2万円)。
    ただし「国民に刺さらなかった」との評価もあり、総裁選では熱が冷めています。即効性はあっても、持続的な効果は薄いという課題があります。

教育費の無償化

  • 必要財源:約6,000億円
    高校授業料と学校給食費の無償化については、日本維新の会と自民・公明が合意。家計支援効果がわかりやすく、少子化対策としても位置づけられています。規模は他政策に比べ小さいものの、恒久財源をどう確保するかが課題です。

税収の「上振れ」に頼れるか?

2024年度は1.8兆円近い上振れがありました。過去5年連続で税収は過去最高を更新し、毎年数兆円規模の余剰が生じています。
しかしこれは景気動向や物価上昇に左右される「臨時収入」であり、恒久的な政策の財源にはなり得ません。


おわりに:選挙のたびに「お祭り」では困る

有権者から見れば、各党が掲げる政策はどれも魅力的に映ります。しかし、同時にすべてを実現できるわけではありません。
必要な財源規模を冷静に見極め、「何を優先すべきか」「どこに持続可能性があるか」を判断することが、次の政権選びで問われています。


📌 参考記事
「各党の看板政策、財源規模は 税収上振れ頼みに限界」日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91617920Z20C25A9EP0000/


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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