前回は、老後資金を考える第一歩として、金融資産の棚卸しの重要性を確認しました。
しかし、棚卸しが大切だと分かっていても、何から手をつければよいのか分からず、結局後回しになってしまう人も多いのではないでしょうか。
第二回では、老後資金の棚卸しを実際に進めるための具体的な考え方と、見落としがちなポイントを整理します。完璧を目指す必要はありません。全体像をつかむことを目的に進めていきます。
棚卸しは「書き出す」ことから始める
老後資金の棚卸しは、頭の中で考えても進みません。
まずは、現在保有している金融資産を紙や表計算ソフトなどに書き出します。形式は問いませんが、一覧で確認できる形にすることが重要です。
この段階では、金額の多寡を気にする必要はありません。思いつく限りの金融資産を漏れなく並べることを優先します。
銀行口座と預貯金の整理
銀行の普通預金や定期預金は、最も把握しやすい資産です。
複数の金融機関に口座がある場合は、すべて洗い出し、現在の残高を記入します。
あわせて、使っていない口座や残高がほとんど動いていない口座がないかも確認します。老後資金の整理という観点では、口座の数を減らすこと自体が管理の負担軽減につながります。
証券口座と投資商品の確認
証券会社の口座では、評価額で資産を確認します。
投資信託や株式は、購入時の金額ではなく、現在の時価評価額を基準にします。
少額投資非課税制度の口座と課税口座が分かれている場合は、それぞれを区別して記載します。運用成績を見ることが目的ではなく、現時点での資産規模を把握することが棚卸しの目的です。
確定拠出年金と勤務先関連の資産
老後資金の棚卸しで忘れやすいのが、確定拠出年金です。
勤務先で加入している企業型の制度や、個人型の制度を利用している場合、現在の残高を必ず確認します。
転職経験がある人は、過去の勤務先の制度がそのまま残っているケースもあります。老後資金として重要な位置づけになるため、漏れなく把握することが欠かせません。
見落としやすい貯蓄性保険
養老保険、学資保険、終身保険などの貯蓄性保険は、保障商品として捉えられがちですが、老後資金の棚卸しでは資産としての側面も重要です。
ここで確認すべきなのは、解約した場合に受け取れる解約返戻金の金額です。保険証券や保険会社の資料をもとに、現在の返戻金額を一覧に記載します。
保障を継続するかどうかの判断は、この段階では行わず、あくまで現状把握に徹します。
一覧表が完成したら確認したいポイント
金融資産をすべて書き出したら、合計額を計算します。
そのうえで、次の点を確認します。
- 預貯金や保険に資産が集中していないか
- 投資商品がどの程度含まれているか
- 忘れていた資産がなかったか
多くの人は、思っていたよりも預貯金の割合が高いことに気づきます。これは悪いことではありませんが、今後の資産の持ち方を考えるための重要な気づきになります。
結論
老後資金の棚卸しは、難しい作業ではありません。
重要なのは、金融資産を一度すべて書き出し、全体像を見える形にすることです。細かい評価や判断は、あとからいくらでも行えます。
次回は、棚卸しで整理した資産をどのように分類し、老後資金としてどう考えていくかを取り上げます。資産の役割を整理することで、老後資金の見え方は大きく変わります。
参考
日本経済新聞
老後資金、棚卸しで点検――インフレ考慮し運用戦略を(2025年12月20日 朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
