これまでの回では、老後資金を把握し、整理し、インフレや運用とどう向き合うかを確認してきました。
しかし、老後資金は増やすことだけを考えていても十分ではありません。最終的には、どのように使い、取り崩していくかという視点が欠かせません。
老後資金の不安が大きくなる理由の一つは、出口のイメージが持てていないことにあります。今回は、老後資金の取り崩しと税金の基本的な考え方を整理します。
老後資金は「使ってこそ意味がある」
現役時代は、老後に備えて資産を減らさないことを意識しがちです。
しかし、老後に入ると、資産は生活を支えるために使うものへと役割が変わります。
使うこと自体を不安に感じ、必要以上に節約してしまうと、生活の質を下げてしまうことにもなりかねません。老後資金は、安心して使うために準備してきたお金だという視点が大切です。
取り崩しには順番がある
老後資金を取り崩す際には、どの資産から使うかという順番を考える必要があります。
資産ごとに、流動性や税金の扱いが異なるためです。
一般的には、日常の生活費は流動性資金から支出し、必要に応じて安全性資金、リスク性資金を取り崩していくという考え方が基本になります。
すべてを一律に取り崩すのではなく、資産の性格を意識することで、老後資金を長持ちさせやすくなります。
課税口座と非課税口座の違い
老後資金の取り崩しでは、税金の扱いも重要なポイントです。
課税口座で保有している投資商品を売却した場合、利益が出ていれば税金がかかります。一方、少額投資非課税制度の口座では、売却益に税金はかかりません。
どちらから先に取り崩すかは、資産の状況によって異なりますが、税負担を意識せずに使える非課税口座は、老後資金の選択肢として柔軟性があります。
年金との組み合わせを考える
老後の収入は、公的年金が中心になります。
年金で賄えない部分を、どの資産で補うかを考えることが、老後資金の出口設計です。
年金収入が安定している場合は、資産の取り崩しを緩やかに進めることができます。一方、年金だけでは不足する場合は、どの程度のペースで資産を使うかを事前に想定しておくことが重要です。
一気に使わないという考え方
老後資金は、退職時にまとめて使う必要はありません。
むしろ、一定の期間ごとに見直しながら、段階的に取り崩していく方が現実的です。
生活費、医療費、予備費などに分けて考えることで、必要以上に不安を感じることなく、老後資金と向き合うことができます。
結論
老後資金は、貯めることよりも、どう使うかが難しいテーマです。
取り崩しの順番や税金の扱いを意識することで、老後資金はより安心して使えるものになります。
次回はいよいよ最終回として、これまでの内容を整理し、老後資金と不安をどう付き合っていくかを総合的にまとめます。完璧を目指さず、点検と見直しを続けるという考え方を確認します。
参考
日本経済新聞
老後資金、棚卸しで点検――インフレ考慮し運用戦略を(2025年12月20日 朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
