4回にわたって「租税特別措置(租特)」と「高校授業料無償化」をめぐる政治論争を追ってきました。本総集編では、これまでのポイントを振り返りながら、今後の展望を整理します。
教育の平等と経済成長をどう両立させるのか。これは単なる税制議論ではなく、日本社会の進むべき方向を問うテーマです。
第1回の振り返り──租税特別措置とは?
最初に整理したのは、租特の仕組みと実態でした。
- 本来の税制から外れ、特定の目的を優遇する「例外的な減税制度」
- 代表例は「研究開発税制」と「賃上げ促進税制」
- 2023年度の減税規模は約2兆8990億円、そのうち研究開発9479億円、賃上げ7278億円
- メリット:企業投資を後押し、政策目的を効率的に実現
- デメリット:恩恵が一部企業に集中、透明性不足、既得権益化
「隠れ補助金」と批判される一方で、日本経済を支える制度としての役割も大きいことを確認しました。
第2回の振り返り──維新の主張と教育財源
続いて、日本維新の会が打ち出す教育無償化の財源論を見ました。
- 高校授業料無償化には最大6000億円が必要
- 藤田文武共同代表は「租特は隠れ補助金。ゼロベースで見直すべき」と主張
- 教育無償化の意義は、①家計負担の軽減 ②教育機会の平等化 ③人的資本投資の強化
- 他党との違い
- 立憲民主党:透明性確保・見直しに前向き
- 国民民主党:むしろ租特拡充を提案
- 自民・公明:成長戦略の柱として維持・拡充を重視
維新にとって、教育財源確保は「政策実現」と「与党との連携強化」の両面を狙った動きであることも明らかになりました。
第3回の振り返り──自民党総裁選と租特論争
3回目では、ちょうど行われている自民党総裁選と租特論争の関係を整理しました。
候補者の立場は大きく二つに分かれます。
- 維持・拡充派(小泉進次郎、林芳正)
租特を「経済成長のエンジン」と位置づけ、拡大路線を示唆。 - 見直し派(高市早苗、茂木敏充、小林鷹之)
財源確保や既得権益打破を理由に、改廃の必要性を示す。
自民党は「経済界との関係」と「維新との連携」の板挟み状態にあり、総裁選後の政権運営の大きな試金石となることが分かりました。
第4回の振り返り──今後のシナリオ
最終回では、今後のシナリオを3つに整理しました。
- 教育優先型
租特を削減し、教育財源に充当。家計を直接支援できる一方、企業投資の停滞リスク。 - 経済優先型
租特を維持・拡充し、成長を最優先。成果が教育に回るまで時間がかかるのが課題。 - 両立型
効果の薄い制度は見直し、効果的なものは維持。透明性向上とバランスを図る現実的選択。
教育と経済は本来対立するものではなく、むしろ相互補完的であるという結論に至りました。
今後の展望
- 10月中:私立高校就学支援金の大枠が決定
- 10月4日以降:新総裁の下で財源論が本格化
- 2026年度:無償化制度がスタート
この間に、租特の方向性がどこまで動くかが大きな注目点です。
もし「教育財源」として租特が削られれば、維新の主張が一定通ったことを意味します。一方で「経済成長のため維持・拡充」となれば、企業支援を優先する自民党の姿勢が再確認されるでしょう。
まとめ
- 租特は日本経済の柱であると同時に「隠れ補助金」と批判される制度
- 教育無償化の財源として見直すべきかどうかが政治課題に
- 維新は見直しを強調、自民党は分裂、野党もスタンスが分かれる
- 今後は「教育 vs 経済」ではなく、「教育と経済の両立」をどう図るかが問われる
📌 参考:
日本経済新聞朝刊(2025年10月4日付)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

