給付付き税額控除はなぜ棚上げされたのか― 解散総選挙と「生活者支援」の行方 ―

政策

中低所得者の負担軽減策として注目されてきた給付付き税額控除が、衆院解散の影響で事実上棚上げとなりました。
政府と与野党が参加する予定だった「国民会議」は立ち上げが困難となり、社会保障と税を一体で見直す議論は空白期間に入っています。
本稿では、給付付き税額控除とはどのような制度なのか、なぜ今議論が止まったのか、そして今後の争点がどこに移り得るのかを整理します。

給付付き税額控除とは何か

給付付き税額控除とは、所得税の税額控除と現金給付を組み合わせた制度です。
控除額が納税額を上回る場合、その差額が給付として支給される点が最大の特徴です。
この仕組みにより、納税額が少ない、あるいは所得税をほとんど納めていない中低所得者にも支援を届けることが可能になります。

制度設計次第で、就労促進、子育て支援、消費税の逆進性対策など、政策目的を柔軟に反映できる点も評価されてきました。海外では、米国、英国、カナダなどで先行事例が存在します。

なぜ今、導入が見送られたのか

今回の最大の要因は、衆院解散による政治日程の混乱です。
政府は当初、1月中に国民会議を設置し、6月の骨太方針策定までに中間整理を行う構想を描いていました。しかし、解散総選挙によって協議の前提が崩れました。

加えて、給付付き税額控除は制度設計が極めて難しい政策です。
どの所得層を対象とするのか、消費税と社会保険料のどちらの負担軽減を主眼に置くのかによって、必要な財源規模は大きく変わります。
こうした論点は、政権基盤が不安定な状況では合意形成が進みにくいのが実情です。

消費税減税との対立構図

解散後の選挙戦では、消費税減税が主要な争点になる可能性が高まっています。
特に食料品の消費税率をゼロにする案は、有権者に分かりやすい政策として支持を集めやすい一方、給付付き税額控除とは政策の方向性が異なります。

消費税減税は即効性がありますが、高所得者にも恩恵が及び、財源確保が課題となります。
一方、給付付き税額控除は対象を絞った再分配が可能ですが、制度の複雑さと導入コストが問題となります。
選挙で消費税減税が前面に出れば、給付付き税額控除の議論は後景に退く可能性があります。

社会保険料負担という見落とされがちな論点

今回の議論で注目すべき点は、日本では低所得層ほど社会保険料負担が重いという現実です。
平均賃金の6割程度の年収水準では、所得税よりも社会保険料が負担の大半を占めています。

給付付き税額控除は、こうした社会保険料負担を含めた実質的な可処分所得の改善を目指す制度でもあります。
消費税減税だけでは解決できない問題に、どこまで踏み込めるかが本来の論点でした。

今後の現実的な選択肢

制度設計の難しさを踏まえ、労働所得に対象を絞り、個人単位で給付する簡素な方式を提案する声もあります。
この方法であれば、年末調整や確定申告といった既存の仕組みを活用でき、導入のハードルは下がります。

ただし、いずれの方式を採るにしても、政治的な合意と安定した議論の場が不可欠です。
解散総選挙後の政局次第では、再び議論が動き出す可能性もありますが、短期的な実現は見通せない状況です。

結論

給付付き税額控除の棚上げは、単なる制度先送りではなく、日本の「生活者支援」をどう設計するかという根本問題の先送りでもあります。
消費税減税か、社会保険料対策か、あるいは給付付き税額控除か。
選挙後の政治が、短期的な人気政策に流れるのか、それとも中長期的な再分配の仕組みを描けるのかが問われています。

参考

・日本経済新聞「給付付き控除棚上げ 解散で『国民会議』始動困難」
・日本経済新聞「給付付き税額控除 就労や育児、目的別に支援」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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