日本経済新聞社と日本経済研究センターが行う「エコノミクスパネル」調査は、第一線の経済学者が今後の政策や経済をどう見ているかを知る貴重な手がかりです。
今回のシリーズでは、以下の3つの視点から読み解いてきました。
- 給付付き税額控除(再分配と就労促進の新制度)
- 物価高の持続性と日銀の金融政策
- 暮らし・投資への実践的な備え方
この総集編では、それぞれの論点を整理して「何がポイントなのか」を振り返ります。
1. 給付付き税額控除とは?
- 仕組み:所得税額を控除した後、控除額が納税額を上回ると差額を給付する制度
- 効果:低所得層や課税最低限以下の人にも支援が届く
専門家の評価(調査結果)
- 導入が望ましい:74%
- 理由は「効果的な再分配」「就労促進につながる」
海外事例
- 米国:貧困率引き下げに有意な効果
- 欧州:制度が複雑で利用率が低迷
課題
- 所得捕捉の正確性(マイナンバー活用必須)
- 行政体制の整備(国税+地方+源泉徴収義務者)
- 財源確保の難しさ
👉 まとめると、「日本でも有効だが、制度インフラと財源をどう整えるかがカギ」と言えます。
2. 物価高は続くのか?
- 2025年8月の消費者物価指数(CPI総合)は前年比 2.7%上昇
- 41カ月連続で2%目標超え
専門家の見解(調査結果)
- 2026年度も2%超 → 45%
- どちらとも言えない → 48%
- 超えない → 少数
インフレ要因
- 人手不足による賃金上昇
- 原材料・エネルギー価格の高止まり
- 価格転嫁の定着
賃上げサイクル
- 春闘での高い賃上げが続く可能性大
- 「賃金と物価の好循環」への期待
👉 経済学者の多くは「物価高は続く可能性があるが、不確実性も大きい」と慎重です。
3. 金融政策をめぐる対立
利上げを支持する派(31%)
- デフレ脱却を背景に「現状の金利は低すぎる」
- 不動産価格の上昇で若年世帯が打撃
慎重派(多数)
- 実質賃金上昇が定着していない
- 外的要因が収束すればインフレも落ち着く
- 国債の利払い負担が財政を圧迫する懸念
👉 日銀は「金利正常化」を進めたい一方、賃上げや財政とのバランスを考えざるを得ない状況です。
4. 暮らし・投資にどう備えるか
家計
- 固定費(住宅・通信・保険)を定期的に見直す
- 住宅ローンは「繰上げ返済」「固定化」を検討
投資
- インフレに強い資産(株式・REIT・金など)を取り入れる
- 全世界株式インデックスで地域・通貨を分散
- NISA・iDeCoをフル活用
仕事・事業
- 人件費増・コスト増を見越した経営判断
- 顧客への再分配政策(給付付き控除など)が消費需要を支える可能性
おわりに
今回のエコノミクスパネル調査から見えてくるのは、
- 「再分配の強化」と「インフレへの備え」が両輪になる
- 政策は「支援を誰にどう届けるか」と「金融・財政の持続性」を両立させる必要がある
ということです。
私たち個人にできるのは、制度改革やインフレを前提にした家計・資産設計。
変化が前提の時代だからこそ、「先手の備え」が安心につながります。
(参考:日本経済新聞 2025年9月30日付「エコノミクスパネル」記事)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
