組織に属しながら“自分を起業する”生き方― 出向起業・副業・リスキリングがつなぐ「キャリアの共創時代」

人生100年時代
ブルー ピンク イラスト メリットデメリット 比較 記事見出し ブログアイキャッチ - 1

■会社員でありながら、起業家である時代

もはや「会社員」か「起業家」かを選ぶ時代ではありません。
今、社会で広がりつつあるのは、
「会社員でありながら、自分を起業する生き方」です。

出向起業や副業、社外プロジェクト、越境研修……。
これらは一見バラバラな動きに見えますが、根底には共通の変化があります。
それは、「働くことの意味」が会社中心から個人中心に移りつつあるということ。

企業の中で積み上げた経験や信用を、自らのキャリア資産として外に開く。
“組織に属しながらも、自分を経営する”生き方が現実味を帯びてきました。


■出向起業が示した「新しい中間領域」

出向起業の登場は、会社員のキャリア観に大きな衝撃を与えました。
退職もせず、転職でもなく、会社の信頼を背にして外の世界で挑戦する。

それは、これまでのように
「安定」と「挑戦」が二者択一だった時代を終わらせ、
“ハイブリッドな働き方”を現実のものにしました。

出向起業を経験した社員の多くは、
経営・財務・交渉・マーケティングなど、
“外でしか得られない視点”を社内に持ち帰ります。

こうして、会社の外と中が互いに影響し合う「共創循環」が生まれていくのです。


■リスキリングが“自己起業”を後押しする

近年注目される「リスキリング(学び直し)」も、
実は“自分を起業する”ための準備そのものです。

AI・データ・ファイナンス・デザインなど、
ビジネスを再構築するための学びが、
今や企業研修や副業制度の中に組み込まれ始めています。

つまりリスキリングは、

「次の会社で通用するための学び」ではなく、
「自分のビジネスを動かすための学び」へ。

企業にいながら、個人としての経営感覚を磨く人が増えています。


■“会社を使いこなす”という発想

これからのキャリアでは、「会社に尽くす」よりも、
「会社を使いこなす」という発想が重要になります。

出向起業・副業・研修・社内起業制度など、
企業はすでに“個人の学びと実践の場”としての機能を持ち始めています。

かつては「会社に依存する」と言われた構図が、
今では「会社というリソースをどう活用するか」に変わりつつある。
この転換こそが、“個人と組織の共進化”の第一歩です。


■FP・税理士の視点:キャリアも「投資」として設計する

金融の世界では、リスクを抑えながら将来のリターンを得るために
ポートフォリオを組みます。

キャリアも同じです。

  • 本業(安定収入)
  • 副業・社外活動(リターンと挑戦)
  • 学び(人的資本への再投資)

これらを「キャリア・ポートフォリオ」として設計すれば、
働き方そのものが資産形成の一部になります。

税理士やFPができる支援は、単にお金の相談ではありません。

  • 本業+副業の所得バランス
  • 学びへの投資効果
  • 起業準備と税務・社会保険の整理

こうした“働き方の収益設計”こそが、次世代のライフプラン支援になります。


■会社を離れずに、個人として立つという選択

多くの人にとって、「会社を辞める」は大きなリスクです。
しかし、いまは「辞めずに動く」選択肢がある。
出向起業や副業、プロボノ活動を通じて、
会社の外でも価値を生み出す経験を積むことができるのです。

こうして得た経験は、いずれ自分の専門性・信用・人脈として蓄積されます。
それは、60代・70代になっても“働ける自分”を支える最強の資産になります。


■まとめ:「組織に属しながら、自分の軸で働く」

人生100年時代の働き方とは、
「会社に依存する」ことでも「独立して孤立する」ことでもありません。

組織に属しながら、自分の軸で働く。
そして、組織と個人が互いに学び合い、高め合う。

それが、これからの“キャリアの共創時代”です。


出典:2025年10月6日 日本経済新聞 朝刊
「『出向起業』で事業創出 富士通・NTTドコモなど制度整備進む」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました