米国株式市場では調整局面が続いています。短期的な値動きの不安が高まる一方で、長期投資家にとっては「どこで反転に向かうのか」が最大の関心事といえます。
2025年度の米国株をどう見るべきか。岩井コスモ証券・小川浩一郎氏の見解を参考にしながら、一般の投資家向けにポイントを整理します。
1.S&P500は2026年3月期に「高値更新」も視野
小川氏は、S&P500指数が2026年3月までに10月の高値(6890)を上抜き、7200に到達するとの見通しを示しています。
背景には以下の要素があります。
- AI関連企業の業績が明確に強いこと
- エヌビディア決算が投資家心理を改善したこと
- 利益成長が再び市場全体のテーマとなりうること
特にAIセクターの牽引力が強く、これが指数全体の下支えになる構図です。
2.AI株は割高か?「PEGレシオ」でみると評価は変わる
AI関連銘柄の株価が高いと警戒する向きは多くあります。
ただし小川氏は、PEGレシオ(PER÷将来利益成長率)で1倍前後の銘柄も多く、成長性を考えるとむしろ割安に見えると指摘します。
- ドットコム・バブル経験世代ほど「バリュエーション警戒」が強い
- ただし今回は利益成長が裏付けとなっている点が過去と違う
これは、単なる「テーマ株」ではなく、実際に利益を生む企業が牽引している相場であることを示します。
3.銘柄選別が進む局面:勝ち組・負け組が明確に
調整局面では、企業間の差が一段と鮮明になります。小川氏が「勝ち組」とみるのは次の銘柄です。
●アルファベット(Google)
- 自社モデル開発で生成AI分野でも存在感
- 財務基盤が極めて安定
- 「2番手戦略」に強い企業文化
- 検索ではYahoo、スマホではiPhoneに挑んで結果を出した実績
- 生成AI「Gemini」はChatGPT対抗の本命とみられる
●アーム(Arm)
- 半導体設計で世界的存在
- エヌビディアの競合として評価されやすい
- AI・データセンターの構造的需要に強み
●キャタピラー
- インフラ需要の拡大・設備投資サイクルが追い風
- 市場が評価を見直す可能性
●量子コンピューター関連
足元は軟調ですが、次の投資テーマ候補として注目度が高い分野です。
4.対照的に冴えないメタ
メタ(旧フェイスブック)については、慎重な見方が語られています。
- テック大手の中では相対的に規模が小さく投資競争で消耗しやすい
- AIモデルの評価が今ひとつ伸びない
- 過去のメタバース事業化の失敗が投資家心理に残る
- AI投資の収益化や財務不安を意識しやすい
同じAI関連でも、企業ごとに明暗が分かれている様子がうかがえます。
結論
米国株は短期調整が続く一方で、AI関連企業の実力値に支えられた「業績相場」への転換が起きつつある段階といえます。
2025~26年にかけて、S&P500は再び高値を追う可能性があるとされ、銘柄選別の重要性がさらに高まります。
投資家としては、
- 成長性をPEGレシオなどで冷静に判断する
- AI関連でも勝ち組とそうでない企業を見極める
- 調整局面は長期投資における仕込み場になり得る
といった視点を持つことが、今後の投資判断に役立つと考えられます。
出典
・日本経済新聞「〈相場を読む〉S&P500、今年度末に7200」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

