第7回 移住・二拠点生活という新しい選択肢― “都会か地方か”ではなく、“両方”を選ぶ時代へ ―

FP
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「定年後は都会か、地方か」。
従来はこの二択で語られてきましたが、近年は事情が大きく変わってきています。

リモートワークの普及、交通手段の多様化、住まい方の価値観の変化により、
“完全にどちらかを選ぶ必要はない”
という現実が生まれました。

具体的には、

  • お試し移住
  • 季節ごとの短期移住
  • 月単位の滞在型移住
  • 二拠点生活(デュアルライフ)
    といった柔軟な選択肢が増えています。

老後の住まいが“固定”ではなく“可変”になることで、都会の利便性と地方のゆとりをバランス良く享受することが可能になります。本稿では、これら新しい住まい方の特徴と、メリット・デメリット、失敗しないためのポイントを整理します。

1. セカンドライフが“可動型”に変化した背景

昔の日本は、定年後に腰を据えて住む場所を決めるのが一般的でした。しかし今は、住まい方の自由度が格段に広くなっています。

●背景要因

  1. リモートワークの普及:勤務地に縛られない働き方
  2. 交通網の発達:都市⇔地方の移動が格段に容易に
  3. 定年後の健康寿命の延伸:活動量が高いシニアが増加
  4. 住まいの多様化:マンスリー、シェア型施設、移住促進住宅など
  5. 自治体の移住支援強化:地方移住が現実的に

つまり、定年後の住まいは「一度決めたらおしまい」ではなく、
段階的に移動しながら住み分けることが可能な時代になっているのです。


2. 完全移住のメリット・デメリット

まずは「都会から地方へ完全移住する」選択肢を整理します。

●メリット

  • 住宅費が劇的に下がる
  • 自然の中でゆとりある生活
  • 生活空間が広い
  • 地域コミュニティとつながりやすい
  • 趣味(ガーデニング・釣り・菜園)との相性が良い

●デメリット

  • 車が必須になりやすい
  • 医療アクセスが弱い地域も多い
  • 都市の文化機会が減る
  • 地域コミュニティが濃いと合わない場合も
  • 高齢になるほど生活負担が増える

完全移住は魅力的ですが、
“健康が保たれている期間”は快適でも、80代以降に負担が増えやすい
という特徴があります。


3. “お試し移住”でリスクを最小化する

最も現実的な方法が「お試し移住」です。

●代表的なトライアル方法

  • 1〜3か月の短期滞在
  • マンスリーマンションを利用
  • 移住促進住宅を活用
  • 地方のシェアハウスに期間限定で居住
  • 季節限定で地方へ滞在(夏・冬だけ)

●メリット

  • 地域との相性がわかる
  • 医療・買い物・交通の“生活動線”を実体験できる
  • コミュニティの接しやすさを確認できる
  • 完全移住をしてから後悔するリスクを下げる

老後の移住は、思い込みではなく“実際の体験”に基づいて判断するのが成功のコツです。


4. 二拠点生活(デュアルライフ)が増えている理由

近年最も注目されているのが「二拠点生活」です。

●二拠点生活とは?

  • 都会の住まいを“拠点1”
  • 地方の住まいを“拠点2”
    として、季節・趣味・家族事情に応じて行き来する生活スタイルです。

●二拠点生活が人気の理由

  • “都会の医療”を手放さなくてよい
  • “地方の自然とゆとり”も楽しめる
  • 家族の近くにいられる
  • セカンドキャリアの仕事も続けやすい
  • 住宅費の調整がしやすい(賃貸活用・小さな拠点など)

都会と地方の“いいとこ取り”ができるのが最大のメリットです。


5. 二拠点生活の費用と注意点

メリットが多い二拠点生活ですが、注意点もあります。

●想定される費用

  • 2つ目の住居費(賃貸なら安価に調整可)
  • 移動費
  • 光熱費
  • 車を持つ場合の維持費

ただし、地方の賃貸は都心より大幅に安いため、
都会の住まいをコンパクト化+地方に小拠点を持つ
といった工夫で、費用は抑えられます。

●注意点

  • 健康状態が悪化した場合、移動が負担になる
  • 地域コミュニティに馴染みづらいケースも
  • 2つの生活基盤を維持する手間がかかる

特に高齢期後半には拠点を減らす必要があるため、
段階的に調整する長期計画が不可欠です。


6. 二拠点生活の現実的な始め方

無理なく二拠点生活を始めるためのステップを示します。

●ステップ①:まずは短期で“滞在”する

1〜2か月程度、希望地域に滞在して生活動線を体感する。

●ステップ②:現地の医療・買い物・交通を確認

  • 病院まで何分か
  • バスの本数
  • 冬季の生活はどうか
  • 食材の調達は容易か
    実際に暮らしてみないと判断できません。

●ステップ③:賃貸で“第二拠点”を持つ

最初は購入せず、賃貸で柔軟に調整するのが安全です。

●ステップ④:都会の住まいは“コンパクト化”

管理負担と固定費を減らしておくと、二拠点生活の持続性が高まります。

●ステップ⑤:80代以降の“出口戦略”も考えておく

  • 都会に戻る
  • 子どもの近くに移る
  • サービス付き高齢者住宅を利用
    などを想定しておくと、後悔がありません。

結論

移住も二拠点生活も、
都会の利便性と地方のゆとりを両方手に入れるための選択肢です。

定年後は価値観も生活スタイルも多様化しており、
都会か地方かの“単純な二択”ではもはや語れません。

大切なのは、

  • 無理なく
  • 自分の体力と経済に合わせて
  • 段階的に
    住まいの選択肢を広げていくことです。

次回の 第8回(最終回) では、
都会派/地方派/二拠点派のタイプ別“最適住まい戦略” をまとめます。

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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