車の利用方法が多様化した今、
- 残価設定クレジット(残クレ)
- マイカーリース
- サブスク型サービス
- カーシェア
- 通常の購入(現金・ローン)
といった複数の選択肢が存在します。
「月々の支払いが安い」
「初期費用がかからない」
といった魅力だけでは、どれが本当に自分に合っているのか判断が難しいものです。
第5回では、5年間の総費用を比較しながら、それぞれの向き・不向きを整理し、
読者が自分に合った最適な選択肢を見つけられるようにまとめます。
1. 比較の前提:5年間利用をモデルケースに設定
比較を公平にするため、以下の一般的条件を設定して試算します。
- コンパクトカーを想定
- 年間走行距離:5,000〜7,000km
- 都市部の平均的条件(駐車場代は参考として別掲)
- ガソリン代は年間10〜14万円
- 任意保険は年間6〜8万円
- 車検・整備は年間5〜7万円
- サブスクやカーシェアは相場ベース
※正確には車種・地域によって差が出ますが、全体の傾向をつかむ目的で概算化しています。
2. 5年間総費用の比較(概算)
下記は「もっとも標準的な条件」での5年間総額の比較例です。
① 通常購入(現金・ローン)
総額:260〜350万円(5年)
- メリット:所有の自由度が高い、走行距離制限なし
- デメリット:初期費用が大きく、車種選びで差が出る
② 残価設定クレジット(残クレ)
総額:280〜360万円(5年)
- メリット:月々の負担が軽い、最新車に乗り続けられる
- デメリット:走行距離制限、車の状態で追加費用、総額は高くなりがち
→ 月々安く見えるが総額は必ずしも安くない
③ マイカーリース
総額:300〜370万円(5年)
- メリット:税金・車検込みで支出が均一化、頭金なし
- デメリット:中途解約不可、残価精算ありのケースも
→ 月々固定にしたい人向け
④ サブスク(任意保険・整備まで込み)
総額:360〜420万円(5年)
- メリット:ほぼ全費用が定額、突発的支出ゼロ
- デメリット:選べる車種が少ない、所有できない
→ とにかく安心したい・手間を減らしたい人向け
⑤ カーシェア
利用回数ごとに分岐が大きくなります。
週1回(買い物中心・月4〜5回)
総額:40〜70万円(5年)
→ 圧倒的に安い
週2〜3回(送迎・買い物中心)
総額:100〜160万円(5年)
→ 所有より安いケースが多い
ほぼ毎日利用
総額:300〜500万円(5年)
→ 所有したほうが安い
3. 年間走行距離ごとの分岐点
車を所有するかどうかは、年間走行距離でほぼ決まります。
◎ 年間3,000km(週1回程度)
→ カーシェアが最安
◎ 年間5,000〜7,000km(週3〜5回)
→ 住環境により分岐
- 都市部:カーシェア+タクシー併用で十分
- 郊外:マイカー所有が現実的
◎ 年間1万km以上(毎日利用)
→ 所有(購入・残クレ・リース)が前提
4. 居住地域による違いは圧倒的
都市部(駐車場代 月20,000〜35,000円)
- 所有のハードルが高い
- カーシェアの利便性が高い
- 車は“贅沢品”として扱われがち
→ 持たない選択肢のほうが合理的
郊外・地方(駐車場代 無料〜数千円)
- 日常生活に車が必須
- カーシェア拠点が少ない
- 車検・整備費も抑えやすい
→ 所有のほうが圧倒的に便利でコスパ良し
5. 「お金」以外に考えるべき価値
費用比較だけでは判断できない価値も存在します。
所有のメリット
- 荷物やチャイルドシートを載せっぱなしにできる
- 緊急時や通院に便利
- 生活の自由度が大きく上がる
非所有のメリット
- 車検・税金・保険の手間から解放
- ラクに最新車に乗れる
- コストが安い(利用回数が少ない場合)
家族構成、通勤距離、休日の過ごし方など、ライフスタイルによる差は大きく、「どちらが正解」とは一概には言えません。
6. 向き・不向きを総整理
◆ 残クレが向いている人
- 常に新車に乗りたい
- 月々の負担を抑えたい
- 走行距離が少ない
◆ リースが向いている人
- 家計を“完全定額”にしたい
- メンテナンスや税金の手間をなくしたい
- 中長期で同じ車に乗る
◆ サブスクが向いている人
- 手間ゼロでカーライフを楽しみたい
- 突発費用ゼロにしたい
- 短期で柔軟に乗り換えたい
◆ カーシェアが向いている人
- 週1〜2回しか使わない
- 都市部在住
- コストを最小化したい
◆ 通常購入が向いている人
- 走行距離が多い
- 長く同じ車を乗りたい
- 自宅駐車場が安い/無料
結論
5年間というスパンで総額を比較すると、
「車をどれくらい使うか」「どこに住んでいるか」
で最適解ははっきりと分かれます。
- 利用頻度が低い → カーシェアが圧倒的に安い
- 利用頻度が中程度 → 地域と生活状況で分岐
- 利用頻度が多い → 所有(購入・リース・残クレ)が現実的
車は単なる移動手段ではなく、生活の質や家計に深く関わる存在です。
月額の安さだけで選ばず、総額とライフスタイルの両方を基準に判断することが大切です。
この第1〜5回のシリーズを通じて、
「自分に合った車との付き合い方」を見つける一助になれば幸いです。
出典
・日本FP協会「トレンドウォッチ」コラム(残価設定クレジット/マイカーリース・サブスク解説)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
