第5回 老後の生活コスト― 都市と地方でこんなに違う ―

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定年後の暮らしを考えるとき、多くの人が「都会はお金がかかる」「地方は安い」というイメージを持ちます。しかし、実際の生活コストは住む地域・生活スタイル・移動手段によって大きく変わり、一概に“都会が高い・地方が安い”とは言い切れません。

老後資金の不安を抱える人が増える中で、生活費の構造を正しく理解することは、安心して暮らすために欠かせない視点です。第5回の本稿では、都会と地方それぞれの生活コストを具体的に比較し、「どこで、どのように暮らせば無理なく老後を過ごせるか」という観点から整理します。

1. 老後の生活コストは“地域差”が非常に大きい

現役時代より収入が減る定年後は、支出の構造を見直す必要があります。特に地域ごとの生活費の差は大きく、同じ生活をしても年間30万〜100万円程度の差が出ることがあります。

老後の生活費は大まかに次の5つで構成されます。

  • 住居費
  • 食費
  • 光熱費
  • 移動費(交通費)
  • 医療・介護関連費

これらの項目が都会と地方でどのように異なるのか、順に見ていきます。


2. 住居費 ― 都会と地方で最も差が出る項目

●都会(東京・大阪・名古屋など)

  • 賃貸の場合:ワンルームでも7〜10万円
  • 分譲マンション:管理費・修繕積立金が高い
  • 高齢者向け住宅の料金も高い傾向

都市部は家賃だけで年間80〜120万円の差が生まれることも珍しくありません。

●地方(政令市を除く県庁所在地・郊外エリア)

  • 賃貸:4〜6万円台が中心
  • 持ち家率が高く、家賃不要の家庭が多い
  • 広い間取りでも割安

地方は住居費が圧倒的に低く、老後の家計を支える大きなメリットになります。


3. 移動費(交通費) ― 老後の“車問題”が都会と地方で分かれる

●都会の強み:車不要で生活できる

  • 電車・バスが充実
  • タクシーも捕まえやすい
  • 買い物・病院が徒歩圏で完結

→ 車を持たないことで、年間40〜60万円(保険料・車検・駐車場・ガソリン代)が丸々節約できます。

●地方の現実:車なしでの生活は困難

  • 買い物・病院・役所が遠い
  • バスは1〜2時間に1本
  • タクシーは高額

→ 高齢者になっても車維持費が続くため、都会と比べて「移動費で大きな差」が生まれます。

地方生活の本当の弱点は、
“車を手放しにくいこと”
にあります。


4. 食費・光熱費 ― 地方が安いとは限らない

一般的には地方のほうが食費や光熱費が安いイメージがありますが、完全な地域差とは言えません。

●食費

  • 都市部:外食が高いが、競争が激しく惣菜・PB商品が充実
  • 地方:地元食材は安いが、スーパーが少ない地域は割高

●光熱費

  • 都市部:ガス・電気の競争が激しいため比較的安い
  • 地方:暖房費(灯油)・上下水道費が高い地域もある
  • 豪雪地帯では冬季の暖房費が都市の2〜3倍になることも

思い込みで判断すると「予想外に高くつく」ことがあるため注意が必要です。


5. 医療・介護関連費 ― 便利さは都会、費用は地方

●都会

  • 通院が容易で予防医療が進みやすい
  • 医療・介護サービスの選択肢が豊富
  • ただし、病院が多いため“受診頻度が上がりやすい”傾向も

→ 医療費はやや増えやすいが、健康管理のしやすさは大きなメリット

●地方

  • 通院に交通費がかかる
  • 介護施設が少ない地域は費用が高騰
  • 受診が難しく症状が重くなり、結果的に医療費が高くなることも

医療・介護に関しては、
費用は地方が安いとは限らない
点に注意が必要です。


6. 老後の生活費:都会と地方の“モデルケース比較”

同じ生活レベルを想定した場合の比較例を示します(仮の数値ですが、差のイメージとして有効)。

●都会暮らし(ワンルーム・車なし)

  • 住居費:90,000円
  • 食費:40,000円
  • 光熱費:15,000円
  • 交通費:10,000円
  • 医療・介護:10,000円
    → 月額 165,000円

●地方暮らし(広めの賃貸・車あり)

  • 住居費:55,000円
  • 食費:38,000円
  • 光熱費:17,000円
  • 車維持費:45,000円
  • 医療・介護:8,000円
    → 月額 163,000円

→ 一見「地方が安い」と思われがちですが、
車の維持費が地方暮らしの最大のコスト増要因
になっています。

さらに、豪雪地帯や山間部では、光熱費・移動費がもっと高くなることもあります。


7. 老後の生活費の“最適解”は地域ではなく「生活構造」で決まる

都会が高い、地方が安い――
この固定観念は必ずしも正しくありません。

老後の生活費を決める要素は 「地域」ではなく「生活構造」 です。

●生活費を決める3つの構造

  1. 車を持つかどうか
  2. 住居費をどこまで抑えるか
  3. 医療アクセスとサービス密度

地方でもバスが頻繁に走る町なら車は不要ですし、都会でも住居費を抑えれば支出は下がります。

「どこに住むか」よりも
「どう生活するか」 が重要なのです。


結論

都会と地方の生活コストの差は、「家賃が高いか安いか」だけでは語れません。
老後の生活費は、

  • 車の必要性
  • 医療アクセス
  • 生活サービスの密度
  • 光熱費
  • 地域特性
    によって大きく変わります。

そして結論として、
“都会は高い・地方は安い”は半分正解で、半分誤解です。

老後資金を無理なく維持するためには、

  • 車を手放せる生活か
  • 住居費を抑えられるか
  • 医療アクセスが良いか

この3つを軸に“自分に合った地域”を選ぶことが重要です。

次回の第6回では、
「人間関係とコミュニティ ― 孤独にならずに暮らすには?」
を扱います。

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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