就業不能保険に加入しようとすると、保障額・免責期間・給付期間・ハーフ型など、さまざまな選択肢が並びます。商品ごとの違いは大きく、どれを選ぶかで保険料も大きく変わります。
しかし、最も重要なのは「自分の家計にとって何をどこまで備える必要があるのか」という点です。本稿では、必要保障額の考え方から、保険料との向き合い方、効率的な設計のポイントまで、実務的に整理します。
1. 必要保障額の決め方
就業不能保険は“生活費を守るための保険”です。
そのため、まずは次の2点を明確にする必要があります。
- 働けなくなったとき、毎月どれくらいの支出が必ず必要か
- そのうち、社会保障や預貯金でどれだけカバーできるか
■ 固定費を洗い出す
- 住宅ローン・家賃
- 光熱費
- 食費
- 保険料
- 通信費
- 教育費
- 税金・社会保険料
- 医療費・交通費(増える可能性)
これらの「必ず出ていく生活費」から、社会保障で賄える部分を差し引いた額が必要保障額の目安になります。
■ 会社員の場合
- 傷病手当金:約3分の2の収入
- 会社のGLTDがあればさらに補填
→必要保障額は比較的小さくなる傾向
■ 自営業の場合
- 傷病手当金なし
- 障害年金は1級・2級のみ
→必要保障額は大きくなりやすい
2. 免責期間(待機期間)の選び方
免責期間とは「就業不能状態になってから給付が始まるまでの日数」です。
一般的には、
- 60日
- 90日
- 180日
などが用意されています。
■ 免責期間を決める考え方
- 会社員 → 傷病手当金があるため長めの免責でも支障が少ない
- 自営業 → 収入がすぐゼロになるため免責は短めが有利
短い免責は保険料が高くなりますが、収入が途絶えるリスクが高い自営業・フリーランスで短期免責が選ばれる理由はそこにあります。
3. ハーフ型(初期支払削減特則)の活用
ハーフ型とは、就業不能発生から一定期間(一般的には540日=傷病手当金の支給期間)に受け取る給付金が半額になる設計です。
■ ハーフ型のメリット
- 保険料が大幅に下がる
- 長期保障を維持しやすい
- 会社員の傷病手当金と相性が良い
会社員の場合、傷病手当金が最長1年6カ月支給されるため、その期間をハーフ型で乗り切る設計は合理的です。
■ ハーフ型のデメリット
- 自営業には不向き(初期の収入がもっとも重要なため)
- 初期の給付が小さく不安に感じる場合がある
家計と職業に合わせて選択する必要があります。
4. 給付期間の選び方
給付期間は「何歳まで生活費をカバーするか」という視点で考えることが重要です。
■ 一般的な選択肢
- 60歳まで
- 65歳まで
- 70歳まで
- 保険期間満了まで
給付期間が長いほど保険料は高くなりますが、実生活では次の点を考慮します。
■ 50代以降は長期保障の重要性が増す
- 長期離脱すると再就職が難しい
- 賃金が元に戻らないケースが多い
- 就業不能期間が長期化しやすい
そのため、50代以降の加入では「できるだけ長めの給付期間」を選ぶ意義が高くなります。
5. 精神疾患の保障をどう考えるか
精神疾患による長期休養は増えており、就業不能保険では重要な論点です。
■ 選び方のポイント
- 精神疾患が対象になっているか
- 給付期間に制限(通算◯カ月)があるか
- 特約で追加できるか
精神疾患対応型は保険料が高くなる傾向がありますが、現代の働き方において重要なリスクであることは間違いありません。
6. 保険料を抑える4つのコツ
- 免責期間を長めにする(会社員向け)
- ハーフ型を活用する
- 給付額を抑えて必要最低限にする
- 収入保障保険の特約で代替する
ただし、単に安さを追求するのではなく、「必要なときに使える」ことが最優先です。
7. 収入保障保険との併用も選択肢
就業不能保険を単独で契約するだけでなく、収入保障保険に「就業不能特約」を付加する方法もあります。
■ メリット
- 保険料が抑えられる
- 死亡保障とまとめて管理できる
■ デメリット
- 給付条件が簡易化しているケースがある
- 精神疾患対応が弱いこともある
単独型と付帯型の双方を比較して、自分に合った設計を選ぶことが大切です。
結論
商品選びで最も重要なのは「いくら備えるか」と「どの期間を補償するか」です。
必要保障額、免責期間、ハーフ型、精神疾患の扱い、給付期間などの要素を、自分の職業・社会保障の厚さ・家庭状況に照らし合わせて調整することが欠かせません。
会社員であれば傷病手当金とのバランス、自営業であれば初期の収入ゼロリスクをどう補うかに焦点を当てると、保険料との整合性が取りやすくなります。
次回は最終回として、就業不能保険の最新動向と、今後の商品選びで注意すべき点をまとめます。
出典
・日本FP協会 コラム
・生命保険会社の就業不能保険商品パンフレット
・健康保険法、国民年金法 ほか
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
