車にかかるお金は「購入費用」だけではありません。駐車場代、燃料費、保険料、車検、メンテナンスまで含めると、数年単位で大きな差が生まれます。
「本体価格の安さ」だけで選ぶと、総額ではむしろ高くつくというケースも珍しくありません。
第4回では、維持費を最小化するための車選びを、燃費・税金・保険・メンテナンスといった複数の観点から解説します。
これから車を購入する人はもちろん、乗り換えを検討している人にも役立つ内容です。
1. 維持費を決める主な6つの要素
車の維持費は、次の6つが大きく影響します。
- 本体価格(残価・リセールバリュー)
- 燃料費(ガソリン・電気)
- 保険料(特に任意保険)
- 自動車税(排気量・EVかどうか)
- メンテナンス費(故障リスクも含む)
- 駐車場代(地域差が大きい)
維持費を抑えたい場合は、これらをバランスよく検討することがポイントになります。
2. ①本体価格と残価の関係:「安い車」が最安とは限らない
本体価格が低くても、リセールバリュー(売却時の価値)が低いと総額では高くなります。
例:
- A車:新車200万円 → 5年後の下取り50万円
- B車:新車250万円 → 5年後の下取り120万円
総額としてはB車のほうが安くなる場合もあります。
SUVやハイブリッド車は残価が比較的高く、軽自動車も人気車種は値崩れしにくい傾向があります。
残価設定クレジット(残クレ)の普及に伴い、メーカー側も残価を意識した販売を強化しているため、「中古市場で人気のある車=総額が安い」という構図は今後も続くと考えられます。
3. ②燃料費:ハイブリッド・EV・軽自動車で差が拡大
燃費性能は維持費に直結します。
走行1kmあたりの燃料費
- ガソリン車:12〜18円
- ハイブリッド:6〜10円
- EV:3〜6円
- 軽自動車:8〜14円
年間1万km走ると燃料費差は大きくなり、
- ガソリン車 → 約12〜18万円
- ハイブリッド → 約6〜10万円
- EV → 約3〜6万円
用途が合えばハイブリッド・EVのメリットは明確です。
ただし、EVは自宅充電環境があるかどうかが重要な分岐点になります。
4. ③保険料:年代・車種・安全装備で大きく変わる
任意保険は維持費で軽視されがちですが、車種選びで大きく差が出ます。
- 外車 → 保険料が高い(修理費が高いため)
- スポーツカー → 高い(事故率の高さ)
- 新しい軽・コンパクトカー → 安い
- 安全装備充実車 → 割引が適用されやすい
特に近年は自動ブレーキなどの先進安全装備(サポカー)割引が保険料を下げる効果があります。
30代〜50代なら、
「事故率が低く、安全性能が高い車を選ぶ」=保険料の節約
につながります。
5. ④税金(自動車税):排気量・環境性能で差がつく
自動車税は排気量や環境基準によって変わります。
- 軽自動車:一律約1万円
- 排気量1.5L:3.5万円前後
- 排気量2.0L以上:4〜6万円
- EV:グリーン化特例で優遇される年もある
長い目で見ると、排気量が小さい車は税金が安く、総額に影響します。
6. ⑤メンテナンス費と故障リスク
車によって故障しやすさ、パーツ代、修理のしやすさが異なります。
- 外車 → パーツ高・修理高
- 国産車 → メンテが安定して安い
- EV → 部品点数が少なく故障しにくい(が、バッテリーは高額)
「維持費を最小化したい」場合は、
国産の軽・コンパクトカー、または信頼性の高いハイブリッド車が候補になります。
7. ⑥駐車場代は地域差が最大
都市部では駐車場代が年間20〜40万円に達することも少なくありません。
これだけで、
- 車を所有しない
- カーシェアを併用する
- 小型車に乗り換える
といった判断材料になり得ます。
郊外・地方では駐車場代が安く、維持費全体に占める割合が大きく下がります。
8. 維持費を最小化する“最適解”の車種タイプ
維持費重視派におすすめのタイプは次のとおりです。
【1】軽自動車(特にハイブリッド軽)
- 税金が安い
- 燃費が良い
- 保険が安い
- 修理費が安い
→ 最強の維持費削減タイプ
【2】コンパクトカー(ハイブリッド車)
- 燃費性能が高い
- 残価も高い
- 車検・修理も安い
→ 「費用」と「走行性能」のバランスが取れた選択肢
【3】EV(自宅充電できる場合)
- 燃料費が最も低い
- メンテナンス費も抑えやすい
→ 利用環境が合えば非常に安く運用可能
9. 「持たない」という選択肢も維持費最小化の一手
これまでの第1〜3回で見てきたとおり、車を持たない(カーシェア・サブスク)という選択肢も維持費削減に有効です。
都市部に住んでいる人で、
- 月2〜6回程度しか乗らない
- ほとんどが買い物用途
の場合、所有するより費用が安くなるケースがほとんどです。
結論
維持費を最小化する車選びで重要なのは、次の5点です。
- 燃費の良い車を選ぶこと
- 残価が高く値崩れしにくい車を選ぶこと
- 保険料と修理費の安い車を選ぶこと
- 駐車場代の負担を考慮すること
- 「持たない」という選択肢も比較すること
特に、軽自動車・コンパクトカーは総額が安定しやすく、
ハイブリッド・EVは年間走行距離が長い人に向いています。
車は長期にわたり家計に影響する固定費です。
購入前に「5年間総額」で比較することで、後悔しない選び方ができます。
出典
・日本FP協会「トレンドウォッチ」コラム(残価設定クレジット/マイカーリース・サブスク解説)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
