―選挙公約と今後の制度改正の方向性―
高齢者の医療費負担をどうするかは、選挙でもたびたび争点になります。
高齢者は有権者全体に占める割合が高く、政策への影響力も大きいからです。
2025年7月の参院選でも、いくつかの政党が「高齢者医療費」を正面から取り上げました。
- 国民民主党:「現役世代の社会保険料軽減」を掲げ、75歳以上の窓口負担を原則2割にする方針を提示
- 一部の政党:さらに踏み込み、財源を確保しつつ「全世代型社会保障」を進めることを主張
つまり、医療費負担の見直しは「現役世代の負担をどう減らすか」と表裏一体のテーマとなっています。
1. 政府の方向性
政府が昨年9月に閣議決定した「高齢社会対策大綱」では、重要な一文が盛り込まれました。
それは、「3割負担(現役並み所得)の対象を拡大する方向で検討する」 というものです。
現在、3割負担は「現役並みの所得」がある高齢者に限られています。
しかし今後は、対象者を増やして「より多くの高所得高齢者に3割負担をお願いする」可能性が高まっています。
2. 負担増は本当に問題ないのか?
実は、すでに導入された3割負担については興味深いデータがあります。
- 通院回数は減少
- しかし健康状態の悪化は確認されなかった
つまり「必要な受診は継続されている」との分析結果が出ています。
これを根拠に「負担増は制度持続に必要であり、健康への影響は限定的」とする見方が政府内では強まっています。
ただし一方で、
- 「軽症時の受診を控えることで重症化リスクが高まるのではないか」
- 「医療格差が広がるのではないか」
といった懸念も根強くあります。
3. 今後の論点
今後の政治・社会保障の議論では、次のような点が焦点になっていくでしょう。
- どの水準の所得から3割負担にするのか?
- 医療費の上限や高額療養費制度をどう見直すのか?
- 現役世代の負担をどれだけ軽くできるのか?
これらは単なる「高齢者か現役世代か」という対立ではなく、社会全体で医療制度をどう持続可能にしていくか という問題です。
まとめ
- 高齢者医療費は選挙公約の柱となる大きなテーマ
- 政府は「3割負担の対象拡大」に向けて検討を進めている
- 健康への影響は限定的という分析もあるが、医療格差拡大の懸念も残る
- 将来にわたって「誰もが必要な医療を受けられる」仕組みをどう守るかが問われている
🖋️参考:日本経済新聞「高齢者医療費、軽減措置を撤廃」(2025年9月6日掲載)
👉 次回(第5回)は、「生活者への影響 ― 医療費増加を家計でどう備えるか」 を具体的に考えていきます。
ということで、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、引き続きよろしくお願いいたします。
