第4回 金融・保険業界の地域包括ケア参画 お金と暮らしを支える新しいサポートの形

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地域包括ケアの中では、医療や介護だけでなく、お金に関する不安や資産管理の困りごとも高齢者にとって重要な課題です。認知症による判断力低下、生活費の管理、詐欺被害の防止、老後の資産形成、相続や保険の手続きなど、高齢期の生活は金融領域とも深くつながっています。

金融機関と保険会社は、店舗網、相談機能、個人情報の取り扱い経験を生かして、高齢者の生活支援に関わる取り組みを拡大しています。本稿では、金融・保険業界が地域包括ケアにどのように参画しているか、その意義と今後の展望を整理します。

高齢社会における金融リスクの拡大

高齢者の生活には、次のような金融リスクが複合的に存在します。

  • 認知症による資産管理の困難
  • 詐欺や悪質商法による被害
  • 年金・生活費の不足への不安
  • 相続・贈与手続きの複雑化
  • 介護費用・医療費負担の増大

これらは医療や介護と同じく生活の質に直結するため、金融機関による支援が地域包括ケアの一部となりつつあります。

金融機関が担う地域支援

金融機関は全国に支店網を持ち、対面の相談機能が強みです。店舗や職員の地域密着性を生かして、次のような取り組みが広がっています。

1. 認知症リスクへの備え

  • 代理人・家族によるサポート制度
  • 成年後見制度・家族信託の案内
  • 本人の判断力を確認しながら進める資産管理
  • 認知症対応型の預金管理サービス

高齢者の金融トラブルの大半は認知力の低下に起因するため、事前対策が重要です。

2. 詐欺防止への貢献
金融機関は、振り込め詐欺や特殊詐欺を防ぐための重要な防波堤として機能しています。

  • ATM付近での声掛け
  • 不審取引の察知と通報
  • 地域住民への啓発活動

金融職員が高齢者と接する機会が多いことが、地域の安全につながっています。

3. 老後の生活資金相談
高齢期の家計管理には専門的な知識が必要な場面が増えています。

  • 年金と貯蓄のバランス相談
  • 住宅資金・リフォーム資金・終活資金の計画
  • 金融商品の見直し
  • 福祉制度や介護費用の情報提供

金融相談は、高齢者にとって生活全体の安心にもつながります。

保険会社が担う地域包括ケア

保険会社は、介護・医療・認知症に関わる商品を多く扱うことから、地域包括ケアとの相性が良い事業者です。

1. 認知症保険・介護保険の拡大

  • 認知症の早期発見につながる保険
  • 介護状態に応じた給付
  • 家族サポートを含む付帯サービス

保険はリスクに備えるだけでなく、早期対応につながる動機づけとしても機能します。

2. 高齢者見守りサービスとの連携
保険会社は、契約者との継続的な接触を生かし、次のような生活支援に参入しています。

  • スマートフォンの見守りアプリ
  • センサーを使った生活状況の把握
  • 安否確認と家族連絡
  • 相談窓口の設置

保険契約を軸に、生活全般の支援に広げる動きが活発化しています。

3. 終活・相続支援の拡大
高齢期における手続きは複雑で、家族トラブルの原因になることも少なくありません。

  • 相続相談
  • 遺言作成サポート
  • 保険金請求の簡素化
  • 死亡後の各種手続き支援

専門資格を持つ職員を配置する会社も増えており、終活と地域ケアの接点は広がっています。

金融・保険業界は地域の見守りネットワーク

金融機関や保険会社は顧客との接点が多く、高齢者の生活の変化を把握しやすい立場です。そのため、地域包括ケアの一員として見守りネットワークに組み込むことができます。

  • 窓口や訪問による日常的な接触
  • 異変に気づきやすい業務フロー
  • 生活困難者を行政や福祉につなぐ役割
  • 事故や疾病時の迅速な対応

医療・介護とは異なる角度から、高齢者の暮らしを広く支援できます。

課題:利益性と個人情報の扱い

一方で、金融・保険業界の参画には課題もあります。

  • 地域密着型のサービスは採算が取りにくい
  • 個人情報の取り扱いが極めて厳格
  • 認知症による判断能力の確認が難しい
  • 高齢者がデジタル化に対応しにくい場合の支援不足

これらを克服するためには、行政との連携や専門職との協働が欠かせません。


結論

金融機関と保険会社は、高齢者の資産管理、詐欺防止、認知症対策、終活支援など、生活に深く関わる領域で地域包括ケアに貢献しています。店舗網や契約者ネットワークを活かすことで、見守りや生活相談の機能を地域に広げることができます。

高齢期の暮らしを支えるためには、お金と生活支援の両方が必要です。金融・保険業界が地域包括ケアの一員として役割を果たすことで、高齢者が安心して暮らせる地域づくりが実現していきます。


参考

金融庁・厚生労働省資料、各社の高齢者向けサービス事例


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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