高齢者や外国人、低所得者など「住宅弱者」と呼ばれる人々の住まいの確保には、大家や行政だけでは対応しきれない課題が数多く存在します。そこで重要になるのが、地域レベルで支援を行う居住支援法人や居住支援協議会の存在です。
改正住宅セーフティネット法では、これらの仕組みをさらに強化する方向が打ち出されました。今回は、地域での支え合いを担うこれらの制度について深掘りします。
居住支援法人とは?
居住支援法人とは、国や都道府県の指定を受けて活動する法人です。具体的な活動内容は以下の通りです。
- 入居支援:住宅弱者が賃貸住宅に入居できるよう物件探しをサポート。
- 見守り・安否確認:高齢者などの生活を定期的に確認し、孤立死を防ぐ。
- 生活相談:家賃支払い、福祉制度の利用など生活全般に関する相談対応。
指定を受けられるのは、NPO法人や社会福祉法人、民間企業など。すでに全国で増加傾向にありますが、需要の拡大に追いついていないのが実情です。
事例:ある地域の取り組み
ある地方都市では、居住支援法人が中心となり、空き家をリフォームして高齢者向けの「セーフティネット住宅」として提供しています。さらに、地域住民やボランティアと連携して定期的に訪問し、孤立を防ぐ取り組みを実施。これにより、大家も「安心して貸せる」と感じ、登録住宅が徐々に増えています。
居住支援協議会とは?
住宅問題は、住宅だけでなく福祉・医療・地域活動とも密接に関係しています。そこで求められるのが、多様な関係者が連携する「居住支援協議会」です。
仕組みと役割
- 構成メンバー:自治体、不動産団体、社会福祉協議会、医療関係者、NPOなど。
- 役割:地域の住宅問題を協議し、支援の方向性を決める。困難事例に対応するための調整機能を持つ。
- 活動例:孤独死対策、ゴミ出しサポート、外国人への生活支援など。
改正法での変化
これまでは市区町村での設置は任意でしたが、改正後は「努力義務」に格上げされました。これにより、全国での設置が進み、地域格差の是正が期待されます。
なぜ地域での支援が重要なのか
- 現場の問題に即応できる
入居希望者の状況は千差万別。地域の事情に詳しい法人や協議会があるからこそ、柔軟な対応が可能になります。 - 大家の安心感を高める
「支援体制があるなら貸してみよう」と思える環境が整えば、登録住宅が増える。 - 孤立を防ぐ地域コミュニティの再生
高齢者や外国人が地域に溶け込み、支え合いの輪が広がる。
課題:支え手の不足
一方で、課題も少なくありません。
- 人材不足:支援法人のスタッフは限られており、相談件数に追いつかない。
- 財源不足:補助金だけでは継続的な活動が難しく、資金調達が課題。
- 地域差:都市部では法人や協議会が比較的充実しているが、地方では担い手がいないケースが多い。
このため、活動の持続性を確保する仕組みが求められています。
連携による成功事例
いくつかの地域では、支援法人と協議会が連携し、成果を挙げています。
- 都市部の例:居住支援法人が大家と入居者の間に入り、保証会社や見守りサービスを組み合わせることで、登録住宅の拡大に成功。
- 地方の例:協議会が中心となり、空き家をリノベーションし移住希望者や高齢者に紹介。人口減少対策とも結びついた。
こうした成功例を全国に広げていくことが課題です。
税理士・FPの視点から
居住支援法人や協議会の取り組みは、税務や家計設計にも大きな意味を持ちます。
- 保証人問題と相続
家族がいない高齢者は保証人確保が難しい。支援法人との連携や「家族信託」「成年後見制度」を組み合わせることで安心につながる。 - 生活費シミュレーション
見守りサービスや支援活動には費用がかかる。老後のライフプランには、こうしたコストを組み込む必要がある。 - 空き家の活用と税制
空き家を放置すると固定資産税が重くなるが、支援法人との連携で貸し出せば資産の有効活用につながる。
専門家が制度を理解し、顧客に合った提案をすることが求められています。
まとめ
- 居住支援法人は、入居支援・見守り・相談を担う地域の実働部隊。
- 居住支援協議会は、自治体・NPO・不動産業者などが連携する協議の場。
- 改正法により、協議会の設置が努力義務化され、支援体制の拡充が期待される。
- 課題は人材・資金不足と地域格差。持続可能な仕組み作りが急務。
次回は「第5回 老後の住まいを考える ― 税理士・FPの視点から」を取り上げ、個人が具体的にどう備えるべきかを整理していきます。
📌参考:日本経済新聞「改正住宅セーフティネット法施行」(2025年9月13日)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
