第3回:なぜ高齢者の負担増が必要なのか

FP
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―医療費増大と少子高齢化の現実―

日本では「人生100年時代」と言われるように、長寿化が進んでいます。
それに伴って、医療を必要とする高齢者の数も増え続けています。

実際、医療費の統計をみると、後期高齢者(75歳以上)の医療費は国民医療費全体の3分の1以上を占めるまでに膨らんでいます。
加齢により生活習慣病や慢性疾患が増えることに加え、入院や薬代なども高額になりがちです。

1. 医療技術の進歩がコスト増につながる

医療技術の進歩は患者にとって大きなメリットです。
例えば、がん治療の選択肢は大きく広がり、長期生存が可能になっています。
人工関節や心臓のカテーテル治療なども、かつては手術が難しかった高齢者に恩恵をもたらしています。

しかしその一方で、最新医療は高額です。
高齢者が長く健康に生きられるようになる一方、社会全体としての医療費はますます増えていきます。

2. 支える側=現役世代の負担が増大

医療費は国民全体の保険料や税金で支えられています。
少子化により現役世代が減るなかで、

  • 健康保険料
  • 介護保険料
  • 消費税(社会保障財源)

など、現役世代の負担は年々重くなっています。

もし高齢者の自己負担を増やさずに制度を維持しようとすると、現役世代の保険料や税金をさらに引き上げざるを得ません。
それは「若い世代の生活を圧迫し、将来への不安を強める」という新たな問題を生みます。

3. 「支え合い」のバランス調整

こうした背景から政府は、「所得のある高齢者には一定の自己負担をお願いする」 という方向にかじを切りました。
これは「現役世代の負担を減らし、制度全体を持続させるための調整策」と位置付けられています。

つまり、単なる「高齢者いじめ」ではなく、

  • 高齢者も現役世代も、無理のない範囲で負担を分かち合う
  • 医療制度を次の世代につなげる

という大きな目的があるのです。


まとめ

  • 高齢化と医療技術の進歩で、医療費は膨張し続けている
  • 支える現役世代は減り、保険料や税負担は限界に近づいている
  • 所得のある高齢者に自己負担を求めるのは、制度維持のための「世代間のバランス調整」

🖋️参考:日本経済新聞「高齢者医療費、軽減措置を撤廃」(2025年9月6日掲載)


👉 次回(第4回)は、「政治と社会保障 ― 選挙公約と今後の制度改正の方向性」 を取り上げます。


ということで、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、引き続きよろしくお願いいたします。

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