前回は、確定拠出年金(DC)で安定運用をするための「分散投資」と「リバランス」について解説しました。
では実際に、資産配分を見直したいとき、どのような方法で調整すればよいのでしょうか?
確定拠出年金ならではの仕組みが、「スイッチング」と「配分変更」です。この2つを正しく理解して活用すれば、長期的に効率よく資産を育てることができます。
スイッチングとは?
スイッチングとは、すでに積み立てた資産を入れ替えることです。
通常の投信との違い
証券会社で投資信託を売却すると、利益に対して約20%の税金がかかります。しかし、DCでのスイッチングでは、
- 売却益に税金がかからない
- そのまま別の商品に振り替えられる
というメリットがあります。
つまり、リバランスをしたり、運用方針を変更したいときに、非課税で資産を組み替えられるのです。
具体例
- 株式比率が膨らみすぎたので一部を債券にスイッチング
- 信託報酬が高い古い投信から、低コストのインデックス投信にスイッチング
2. 配分変更とは?
配分変更は、これから拠出する掛け金の行き先を変えることです。
例えば、
- 今まで定期預金100%にしていた → 今後は投信を30%組み込む
- 株式中心にしていた → これからは債券を増やして安全資産の比率を高める
すでに積み上がった資産はそのままにして、未来の掛け金だけ変更できるのが特徴です。
スイッチングと配分変更の違いまとめ
| 項目 | スイッチング | 配分変更 |
|---|---|---|
| 対象 | これまで積み立てた資産 | 今後の掛け金 |
| 目的 | 運用中の資産を入れ替え | 将来の積立比率を修正 |
| 税金 | 非課税 | そもそも課税なし |
| タイミング | 必要に応じて都度 | ライフステージや方針変更時 |
どちらも無料でできるケースが多く、手続きはインターネットの専用サイトやコールセンターから可能です。
こんなときに活用しよう
ケース1:市場環境が大きく変わった
たとえば、株価が急上昇して株式比率が大きく膨らんだとき。
→ スイッチングで一部を債券に回す。
ケース2:ライフステージが変わった
30代までは株式多めで良いが、40代・50代ではリスクを減らしたい。
→ 今後の掛け金を配分変更して債券や定期預金を増やす。
ケース3:より良い商品が出てきた
新しく低コストのインデックス投信がラインアップに追加された。
→ 既存資産をスイッチングで移し替え、掛け金も配分変更で新商品に振り向ける。
手続きの流れと注意点
手続きの流れ
- 加入しているDCの専用サイトにログイン
- メニューから「スイッチング」または「配分変更」を選択
- 商品の売却と購入、または掛け金の配分割合を指定
- 注文完了 → 実際の売却・購入反映まで数日かかる
注意点
- 信託財産留保額が設定されている投信は、売却時にコストがかかる場合がある
- 注文してから反映されるまで数日かかるため、短期売買には不向き
- 頻繁に変更するより、年1回程度の見直しで十分
心理的ハードルを下げる工夫
「操作が難しそう」「失敗したらどうしよう」と感じる方も多いでしょう。しかし、実際にはインターネットバンキングの振込操作と同じくらいの感覚でできます。
- まずは少額で試す:スイッチングで資産の一部だけ移してみる
- 練習感覚で配分変更:掛け金の一部だけ変更して慣れていく
- サポート窓口に相談:コールセンターは初心者向けに丁寧に対応してくれる
「とにかく一度やってみる」ことが最大のハードル越えになります。
よくある誤解
- 「スイッチングすれば必ず得する」
→ あくまで資産配分を整えるための仕組みであり、短期的な売買益を狙うものではない。 - 「一度配分変更したらもう直せない」
→ 何度でも変更可能。ライフステージに合わせて柔軟に使うべき。 - 「専門知識がないと無理」
→ 分散投資とリバランスの基本を押さえていれば、難しく考える必要はない。
まとめ
- スイッチング=過去の資産を入れ替える
- 配分変更=未来の掛け金を振り分け直す
- どちらも非課税で活用でき、長期運用の強い味方
- 年1回程度の点検と、ライフステージに応じた調整で十分
- 「やってみる」ことで将来の資産形成に大きな差が生まれる
確定拠出年金は「放置しないこと」が何より大切。そのための実践ツールがスイッチングと配分変更です。
👉 次回(第4回)は、「商品選びのポイント:低コスト型に注目」について詳しく解説します。
(参考 2025年9月13日付日経新聞朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
