第3回 空き家400万戸とマッチングの壁

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日本には、すでに400万戸以上の空き家があるといわれています。人口減少と都市集中の影響で、今後も空き家は増え続けると予測されています。

一方で、「高齢者が賃貸住宅を借りられない」「外国人が部屋を紹介してもらえない」といった声は絶えません。空き家はあるのに、住みたい人が住めない――。ここには深刻なマッチングの壁が存在します。

今回は、この「空き家問題と住宅弱者支援のミスマッチ」について掘り下げます。


空き家400万戸という現実

総務省の住宅・土地統計調査によれば、日本の空き家は年々増加し、現在は400万戸を優に超えています。地方だけでなく都市部にも空き家は存在しており、社会問題化しています。

空き家増加の背景には、

  • 少子高齢化で相続した家を使わないまま放置
  • 地方から都市への人口流出
  • 建物の老朽化で貸し出しが困難
    といった事情があります。

つまり、「貸す側にとってリスクが大きい」「使い道が分からない」という理由で、空き家は眠ったままになっているのです。


なぜ借りたい人とつながらないのか

一方で、住宅を借りたい人たちは確実に存在します。特に高齢者、低所得者、外国人、ひとり親世帯など「住宅弱者」と呼ばれる層です。

しかし、この両者が結びつかないのはなぜでしょうか。主な要因は以下の通りです。

  1. 老朽化による安全性の問題
    古い木造住宅などは耐震性や防火性に不安があり、入居を勧められない。
  2. 修繕費用の負担
    貸し出すにはリフォームが必要だが、費用をかけても採算が合わない。
  3. オーナーの不安感
    高齢者や外国人への入居に伴うトラブル(孤独死、家賃滞納、近隣摩擦)を懸念して貸し出さない。
  4. 情報の非対称性
    借りたい人が空き家の情報にアクセスできない。オーナーも支援制度を知らない。

この「情報と信頼のギャップ」が、マッチングを阻んでいるのです。


セーフティネット住宅の登録は伸び悩み

住宅セーフティネット法では、大家が「入居制限をしない」と登録した物件を「セーフティネット住宅」として紹介する仕組みがあります。

しかし、登録件数は期待ほど伸びていません。理由は、

  • オーナー側のメリットが分かりづらい
  • 行政手続きが煩雑
  • 入居者のトラブルリスクをカバーする制度が弱い

このため、登録が進まず「借りたい人に物件が届かない」状況が続いています。


空き家と高齢者をつなぐ試み

それでも各地でユニークな取り組みが始まっています。

  • 自治体による空き家バンク
    → 地域の空き家をリスト化し、移住希望者や住宅弱者に紹介。
  • NPOの仲介支援
    → 高齢者の入居を前提にリフォームを行い、見守りサービスをセットで提供。
  • 保証会社との連携
    → 孤独死や家賃滞納のリスクをカバーする保険商品を導入。

これらはまだ一部の地域に限られますが、成功例として注目されています。


マッチングが進まないことの社会的損失

空き家が活用されないことは、単なる不動産の問題にとどまりません。

  1. 治安や景観の悪化
    放置された空き家は防犯上のリスクや景観悪化につながる。
  2. 資源の浪費
    使える住宅が眠っているのに、新築需要が続くのは非効率。
  3. 高齢者の住居不安の拡大
    借りられる住宅が限られれば、住まいを失うリスクが高まる。

結果として、医療費や介護費の増大、地域コミュニティの崩壊など、社会全体に悪影響を及ぼすのです。


ICTとデータベースの可能性

マッチングを進めるためには、データの可視化が不可欠です。

  • 全国規模での空き家データベース整備
  • 入居希望者の条件(年齢・収入・生活支援の必要性)と照合できる仕組み
  • 見守りサービスや保証制度とセットでの紹介

ICTを駆使することで「空き家」と「借りたい人」を効率的につなげることができます。


税理士・FPの視点から

空き家問題は税務や資産管理とも密接に関わります。

  • 相続税対策としての空き家活用
    空き家を放置すれば固定資産税の負担が重くなる一方、適切に活用すれば資産価値を維持できる。
  • 不動産収入の確保
    高齢者向け賃貸として整備すれば、安定収入源になる可能性。
  • 家計プランにおける住まいの確保
    将来賃貸に住み替える場合、家賃負担をどう組み込むか。

つまり、空き家と高齢者の住まい問題は「家計設計」「相続」「地域経済」と密接につながっており、専門家が果たす役割は大きいといえます。


まとめ

  • 日本には400万戸を超える空き家がある。
  • しかし住宅弱者と結びつかないのは、老朽化・費用・不安・情報不足といった壁があるため。
  • 成功例も出てきており、ICTや保証制度の導入がカギとなる。
  • 税制や家計の観点からも、空き家活用と住宅弱者支援は重要テーマ。

次回は「第4回 地域で支える仕組み ― 居住支援法人と協議会」を取り上げ、支援の担い手がどのように広がっているかを解説します。


📌参考:日本経済新聞「改正住宅セーフティネット法施行」(2025年9月14日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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