第3回 住民税と社会保険の壁 ― 実務で気をつけたいポイント

FP
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🏠 110万円の壁 ― 「住民税」が発生するボーダー

これまで「住民税がかかるライン」は年収100万円でしたが、
2025年の改正で110万円に引き上げられました。

区分改正前改正後
住民税の課税ライン100万円110万円
主な理由給与所得控除の引き上げ給与所得控除+基礎控除の見直し

この変更は、単に税金の負担が軽くなるというだけでなく、
「非課税世帯」の基準にも関わる重要な改正です。
たとえば、自治体による医療費助成や給付金の対象は「住民税非課税世帯」であることが多く、
この110万円ラインを超えると、支援制度の対象外になるケースもあります。

💬【実務の注意点】
「住民税がかからない=社会保険にも加入しなくていい」ではありません。
税と保険は制度が別なので、別々に確認する必要があります。


🧾 106万円の壁 ― 「短時間労働者」の社会保険加入基準

社会保険(健康保険・厚生年金)には、次のような2つの壁があります。
1つ目が「106万円の壁」です。

これは、勤務時間・勤務日数が通常の社員の3/4未満でも
以下の要件を満たす場合は社会保険に加入しなければならないという基準です。

加入条件(いずれも満たす場合)

  • 週20時間以上勤務
  • 月額賃金8万8,000円以上(≒年収106万円以上)
  • 勤務期間1年以上の見込み
  • 学生でない
  • 勤務先が従業員101人以上の企業(※)

※2024年以降、対象企業が段階的に拡大中。2025~2026年にかけて51人以上の企業も対象になる見込みです。

🗓️ 現行では、「キャリアアップ支援のための社会保険適用促進手当」により、
社会保険加入による手取り減少を一時的に補う制度も設けられています。
ただしこの制度は
時限的(3年以内に撤廃予定)です。


🧍‍♀️ 130万円の壁 ― 「被扶養者」から外れるライン

もう1つの壁が「130万円の壁」です。
これは、配偶者や親の扶養に入っている人が、自分で社会保険に加入しなければならなくなるラインです。

具体的には…

  • 年収が130万円を超えると、被扶養者の認定を受けられず、
     自分で健康保険と年金に加入(保険料を負担)することになります。
  • ただし、「事業主証明書」を勤務先から提出すれば、
     一時的に扶養を継続できる
    特例制度(時限的)が2023年10月からスタートしています。

この特例により、「繁忙期だけ一時的に収入が増えた」場合などでも、
すぐに扶養から外れる必要はなくなりました。


⚖️ 「106万円」と「130万円」どちらを気にすべき?

  • 勤務先が大企業(101人以上) → 「106万円の壁」に注意
  • 勤務先が中小企業(100人以下) → 「130万円の壁」が中心

つまり、自分の働く会社の規模によって、気をつける壁が違うのです。


💬 実務担当者・経理部門へのアドバイス

企業側では、次の点を押さえておくと安心です。

  1. 社会保険加入義務者の判定は、定期的にチェック
  2. 「扶養のまま働きたい」と希望する従業員には、
     → 「事業主証明書」や「適用促進手当」の制度を案内
  3. 年末調整では、所得・扶養・社会保険の整合性を確認
  4. 就労調整による人手不足リスクを防ぐため、柔軟な勤務制度も検討

🧭 まとめ:「“働き控え”を防ぐ制度理解を」

「年収の壁」は、単なる“税の話”ではなく、
生活支援制度・社会保険・企業人事の三位一体の課題になっています。

2025年改正をきっかけに、
「損をしないために働かない」から「制度を理解して働き方を選ぶ」時代へ。
制度を正しく知り、自分と家族に合った“働き方バランス”を見つけましょう。


🗒️ 出典:企業実務2025年7月号 特別記事
「徹底解説!『新・年収の壁』を攻略する」澁谷典彦税理士事務所 澁谷典彦 氏


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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