■ 見落とされがちな「住宅のランニングコスト」
マンションを購入した人の多くが、「住宅費=ローン返済」と考えがちです。
しかし実際には、住宅取得後にも継続的に支払うコストがいくつもあります。
代表的なのが次の5つです。
1️⃣ 管理費
2️⃣ 修繕積立金
3️⃣ 固定資産税・都市計画税
4️⃣ 火災保険・地震保険料
5️⃣ 光熱費・通信費などの生活インフラ費
住宅ローンの返済額だけを基準に家計を組んでしまうと、こうした固定費が“想定外の支出”としてのしかかります。
特に新築マンションでは、数年後に修繕積立金の増額が行われるケースが多く、「思っていたより生活が苦しい」という声をよく耳にします。
■ 管理費と修繕積立金の違いを正しく理解する
まず押さえておきたいのは、「管理費」と「修繕積立金」は全く別の性格を持っているということです。
| 費用項目 | 使い道 | 特徴 |
|---|---|---|
| 管理費 | エレベーター・清掃・共用電気など、日常的な維持管理 | 毎月発生する“運営費” |
| 修繕積立金 | 外壁・屋上防水・配管更新などの大規模修繕 | 長期的に積み立てて使う“将来費” |
特に修繕積立金は、マンションの老朽化に合わせて段階的に上昇します。
国交省のモデルでは、築30年を迎える頃には初期設定の約3倍に達する例もあります。
もし購入時に「月額1万円」だったとしても、20〜30年後には「3万円前後」になることも。
ライフプラン上では、これを自動的に上がる支出として見込んでおく必要があります。
■ 固定資産税・都市計画税の“時間差リスク”
住宅を所有すると、毎年5〜6月に自治体から「固定資産税納税通知書」が届きます。
課税額は、土地と建物の評価額に税率を掛けて算出されますが、新築時の軽減措置が終わるタイミングで一気に税額が上がることが多い点に注意が必要です。
- 新築マンション:建物部分に3年間(長期優良住宅なら5年間)の軽減
- 一戸建て:建物部分に3年間の軽減
軽減期間が終わると、税負担が年間10万円単位で増えることもあります。
購入当初の“お得感”だけで判断せず、軽減措置終了後の実額を確認しておくことが大切です。
■ 火災保険・地震保険も“10年ごと”に見直しを
住宅ローンを組む際、火災保険の加入が義務付けられています。
ただし、多くの人が「ローン返済期間=保険期間」と勘違いしています。
実際には、
- 火災保険は最長10年契約(2022年以降は最長5年)
- 地震保険は最長5年
つまり、保険料は5〜10年ごとに更新・再支払いが必要なのです。
近年は災害リスクの高まりにより保険料が上昇傾向にあります。
FP相談でも、「10年前の倍以上の保険料になって驚いた」というケースが増えています。
■ 住宅コストの総額を「年単位」で把握しよう
これらの固定費を月単位で見ると実感が湧きにくいですが、年単位で計算すると現実的な負担が見えてきます。
たとえば、次のようなイメージです(首都圏・新築マンション・70㎡モデル)。
| 費用項目 | 月額(円) | 年額(円) |
|---|---|---|
| 管理費 | 12,000 | 144,000 |
| 修繕積立金 | 10,000(将来3万円想定) | 120,000〜360,000 |
| 固定資産税・都市計画税 | 約15万円(軽減終了後) | 150,000 |
| 火災・地震保険料 | 5年で10万円(年間換算) | 約20,000 |
| 合計 | 約37,000〜67,000 | 約440,000〜800,000 |
つまり、年間40〜80万円の固定費が、ローンとは別にかかることになります。
これを老後までの30年スパンで見ると、1,000万円を超える支出です。
住宅ローンの完済後も「住宅維持コスト」は残り続けるという意識が必要です。
■ FPがすすめる「住宅コストの3分割思考」
住宅を持つということは、次の3つの支出を同時に背負うということです。
1️⃣ ローン返済(資産取得)
2️⃣ 管理・修繕(資産維持)
3️⃣ 税金・保険(リスク対応)
多くの家庭は1️⃣に集中しがちですが、2️⃣と3️⃣を軽視すると、将来的に「住めるけれど維持できない」状態に陥ります。
FPとしては、住宅費の全体を月収の25〜30%以内に抑える設計を基本とし、
将来の修繕増額や固定資産税上昇も織り込んだキャッシュフロー表を作成することを勧めています。
■ まとめ:「家を持つ=家計を経営する」時代へ
住宅は“所有物”ではなく、“長期プロジェクト”です。
ローン返済が終わっても、管理費・修繕費・税金・保険という固定費は確実に続きます。
だからこそ、
「買う」前に“いくら返せるか”だけでなく、
「持ち続ける」ために“いくら維持できるか”を考える。
これが、これからの住宅購入における最も大切な視点です。
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
