消費税の確定申告は、申告書に数字を書き込む前の「集計」が9割だと言っても言い過ぎではありません。特に令和7年分は、標準税率10%と軽減税率8%の2税率を前提に、区分経理と区分集計が必要になります。第2回は、どの申告書を使うのか、売上と仕入をどう整理するのか、実務で崩れやすいポイントを事例付きで整理します。
1 申告書は「一般用」か「簡易課税用」から始まる
まず大枠は2つです。
- 一般課税(簡易課税を選択していない)→ 一般用の申告書
- 簡易課税(選択届出書を提出し適用)→ 簡易課税用の申告書
簡易課税を使えるかどうかは、原則として基準期間(令和5年分)の課税売上高が5000万円以下かどうかが目安です。5000万円を超える場合は一般課税になります。
ここで大事なのは、簡易課税は「申告時に思いつきで選ぶ」のではなく、原則として事前の届出が前提になる点です(2割特例とは性格が違います)。この点が混ざると、申告直前に「簡易課税にすればよかったのにできない」という話になりがちです。
2 税率区分は「売上」と「仕入」で別々に崩れる
税率区分は、売上側と仕入側の両方で必要です。
令和7年分の基本は次の2つです。
- 軽減税率8%(飲食料品等)
- 標準税率10%(それ以外)
売上側は「請求書やレシート上の税率表示」で区分しやすい一方、仕入側は「インボイスの保存要件」「免税事業者等からの仕入れの経過措置」が絡むため、数字の集計はできても、控除できる税額が別になるケースが出ます。集計段階では、まず税率ごとに分けて数字を揃え、その後に控除判定を当てる、という二段構えが安全です。
3 ミニケース:飲食店の「店内飲食10%」と「テイクアウト8%」
【事例】
同じ飲食店でも、店内飲食は外食扱いで10%、テイクアウトは飲食料品の譲渡として8%になる場面があります。
たとえば、ある月の売上が次のとおりだったとします。
- 店内飲食:税込110万円(10%)
- テイクアウト:税込108万円(8%)
【ミニ計算】(割戻しのイメージ)
- 10%分の税抜売上:110万円 ÷ 1.10 = 100万円、消費税等:10万円
- 8%分の税抜売上:108万円 ÷ 1.08 = 100万円、消費税等:8万円
同じ「100万円売った」でも税額が変わるため、税率区分のズレがそのまま納付税額のズレになります。ここは「売上を税率別に分けてから計算する」を徹底するのが基本です。
4 課税売上に混ぜてはいけないものを先に除く
区分集計以前に、課税売上に入れないものを混ぜないことが重要です。代表例として、土地の譲渡、住宅家賃などは非課税です。
また、業務用資産(車両など)の売却は課税売上になり、しかも「利益」ではなく「売却代金全額」が課税売上になる点は落とし穴です。
【ミニケース:営業車を30万円で売却】
営業車を30万円で売却し、帳簿上は取得費や簿価がどうであれ、消費税の課税売上は売却代金(税抜・税込の処理に応じた金額)を基に計算します。所得税の譲渡損益の感覚と混ぜると、売上計上が小さくなってしまうミスが起きます。
5 年の途中から課税事業者になった場合は「課税期間の切り出し」が必須
インボイス登録などで年途中から課税事業者になった場合、課税事業者である期間の取引のみが申告対象になります。
【事例】
令和7年4月1日にインボイス登録→4月1日から課税事業者。
この場合、令和7年分の消費税申告は「4月1日〜12月31日」の取引を税率別に集計します。
1月〜3月の取引は、免税事業者期間であれば、原則として申告計算に入れません。ここは集計表を作る段階で、期間を明確に分けるのが安全です。
6 集計のおすすめ手順(崩れにくい順番)
実務では次の順番が崩れにくいです。
- 課税期間の範囲を確定(年途中なら開始日を固定)
- 売上を8%・10%で税率別に集計
- 仕入も8%・10%で税率別に集計(控除可否は後で判定)
- 申告方式(一般・簡易・2割特例)を確定
- 申告書・付表へ転記
次回は、税額計算の方法(積上げ・割戻し)と、一般課税・簡易課税で何が変わるかを、計算ミニケース込みで整理します。
結論
令和7年分の消費税申告は、税率区分(8%・10%)と課税期間の切り出しが土台になります。申告書の選択はその上に乗る話で、集計が崩れると何を選んでも数字が合いません。売上と仕入を税率別に分け、課税売上に入れないものを先に外すことが、最短で正確に仕上げるコツです。
参考
- 税のしるべ 森田修「令和7年分消費税の確定申告のポイント」2026年2月2日
- 国税庁「令和7年分 消費税及び地方消費税の確定申告の手引き(個人事業者用)」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
