確定拠出年金(DC)で分散投資を実現する方法として、近年注目度が高まっているのが「ターゲットデート型投資信託」です。加入者が退職する年代を“ターゲット(目標年)”として設定し、その年齢に向けて自動的にリスクを調整してくれる仕組みです。
投資経験が浅くても、1本で分散とリスク調整が完結するという利点から、欧米では標準的な選択肢として普及しています。本稿では、その特徴・強み・注意点を整理し、日本のDCでどう活用すべきかを解説します。
1. ターゲットデート型とは何か
ターゲットデート型のポイントは、時間の経過とともにリスク資産と安全資産の割合が自動的に変化することです。
- 若い年代:株式中心で資産成長を重視
- 退職が近づく:債券比率を増やして値動きを安定化
- 退職前後:元本の大幅な変動を抑える設計
いわゆる「ライフサイクル型」の仕組みで、加入者が運用のタイミングを見誤るリスクを軽減します。
2. ターゲットデート型の強み
(1)行動の失敗を防ぎやすい
人は市場変動に弱く、
- 上がったときに追いかけて買い、
- 下がったときに怖くなって売る、
という行動を繰り返しがちです。
ターゲットデート型は自動調整が前提のため、「いつ株式を減らすか」などの意思決定を加入者が行う必要がありません。
(2)1本で“本当の分散”が完結する
国内外の株式・債券を組み合わせ、資産全体の相関関係まで考慮したポートフォリオが組まれています。
(3)DCのデフォルト商品として最適
企業型DCの指定運用方法として設定しやすく、従来の「元本確保型デフォルト」より長期成果が改善しやすいとされています。
3. 課題・注意すべき点
(1)リスク低下のペースが商品ごとに違う
同じ「2030型」でも、運用会社によりリスク配分が大きく異なります。
例:
- A社:株式→債券移行が早い
- B社:60代まで株式比率を高めに維持
加入者は、ターゲット年だけでなく「リスクの落ち方」を確認する必要があります。
(2)長寿化リスクに十分対応できない場合も
退職後の運用期間が伸びる中、あまりに早く債券比率が高まると、資産が成長せず「長生きリスク」に対応できません。
(3)手数料差が大きい
同じカテゴリーでも、信託報酬が0.2%台から1%近いものまで幅があります。
4. 日本のDCでどう活用するか
- 投資初心者・選択が難しい加入者
- 忙しくて定期的に見直しができない人
- 企業のデフォルト設定として利用する場合
とくに効果が高い選択肢です。
一方で、「退職後も運用する」ことを前提に、ターゲット年後の配分も確認することが重要です。
結論
ターゲットデート型投信は、加入者の負担を減らしながら、長期の資産形成において高い合理性を持つ仕組みです。一方で、すべての商品が同じ設計ではないため、ターゲット年だけではなくリスク調整方法やコストを確認することが欠かせません。
日本のDC制度では、加入者教育の負担を減らし「見せかけ分散」を防ぐための有効な選択肢として、今後ますます重要性が高まると考えられます。
参考
- 日本経済新聞 記事
- OECD年金レポート
- ターゲットデートファンド各社資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
