税務調査は「突然」ではない 調査に至るまでのプロセス

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税務調査という言葉から、「ある日突然、税務署から連絡が来るもの」という印象を持つ方は少なくありません。
実際に調査の連絡自体は突然に感じられるかもしれませんが、その裏側では、一定のプロセスを経て調査対象が選ばれています。

第3回では、AIによる分析結果がどのように活用され、どの段階で税務調査が決まっていくのか、その流れを整理していきます。

出発点は「全法人のデータ」

税務調査の検討は、特定の法人だけを最初から狙い撃ちするものではありません。
国税庁が保有する申告書や決算書、法定調書などのデータは、原則としてすべての法人が対象になります。

その中で、AIを活用した予測モデルが、過去の調査事例や不正パターンと照らし合わせながら、調査の必要度が高い可能性のある法人を抽出します。
令和6事務年度では、約339万法人のうち、約49万法人がこの段階で抽出されました。

AIの抽出は「候補リスト」にすぎない

ここで重要なのは、AIが抽出した法人は、あくまで「調査候補」にすぎないという点です。
AIはリスクの可能性を示すだけで、調査を実施するかどうかを決める権限は持っていません。

抽出された法人については、申告内容や添付書類、過去の対応状況などを人の目で確認し、総合的な検討が行われます。
この段階で、多くの法人は調査対象から外れます。

調査官による最終判断

AIの分析結果や資料情報を踏まえたうえで、最終的に調査を行うかどうかを判断するのは調査官です。
業種や事業規模、これまでの申告状況なども考慮され、実地調査が適当かどうかが判断されます。

その結果、実際に調査事案として決定されたのは、約5万3,000件でした。
数字を見ると、AIによる抽出から実際の調査決定までには、かなりの絞り込みが行われていることが分かります。

書面調査と実地調査

税務調査には、いきなり現地に来る実地調査だけでなく、書面での確認を中心とした対応もあります。
資料の提出や説明で確認が済めば、現地調査に進まないケースもあります。

AI分析は、こうした調査手法の選択にも影響を与えています。
リスクの度合いや内容に応じて、どの程度の調査が必要かを見極める材料として活用されています。

「判定されなかった法人」も対象外ではない

一方で、AIによる予測モデルで調査必要度が高いと判定されなかった法人であっても、調査が行われることはあります。
個別の情報提供や資料分析の結果によっては、調査対象となる可能性は残っています。

つまり、AIは調査を効率化するための重要なツールではありますが、それだけで調査の有無が決まるわけではありません。


結論

税務調査は、決して偶然や思いつきで行われているものではありません。
AIによるデータ分析と、人による判断を重ねることで、段階的に調査対象が選ばれています。

そのため、調査の連絡が来た場合、それまでの申告内容や数字の積み重ねが背景にあると考える必要があります。
AI時代の税務調査では、「突然来た」のではなく、「積み重ねの結果として来た」と理解することが、冷静な対応につながります。

次回は、不正とミスはどのように区別されているのか、AI時代の税務リスクの考え方を整理していきます。


参考

・税のしるべ「AIと調査官の知見を組み合わせ精度の高い調査を実施」(2025年12月8日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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