税務から逆算する「失敗しない事業承継」

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事業承継の相談では、「どの制度を使えば税金が安くなるのか」という問いから話が始まることが少なくありません。しかし、税務は事業承継の目的ではなく、結果を左右する要素の一つにすぎません。
本当に重要なのは、事業承継の全体像を描いたうえで、税務をどの位置に置くかを判断することです。税務から逆算するという考え方は、そのための整理の手がかりになります。

税務は「制約条件」として捉える

税務は、事業承継の選択肢を決めるための指針というよりも、制約条件として捉える方が現実的です。
どの承継方法を選んでも税務上の影響は避けられません。重要なのは、税負担をゼロにすることではなく、どの程度の負担であれば経営や人生設計に耐えられるのかを見極めることです。税務を冷静に数値化することで、感情論に流されにくくなります。

税務だけで決めてはいけない理由

税務面で有利に見える選択肢が、必ずしも経営上の最適解とは限りません。
例えば、税負担を抑えるために承継方法を限定した結果、将来のM&Aや事業再編が難しくなるケースもあります。事業承継は一度きりの意思決定であり、やり直しは容易ではありません。税務は重要ですが、それだけで結論を出すべきではありません。

経営・家族・従業員とのバランス

失敗しない事業承継を考えるうえでは、税務、経営、家族、従業員という複数の視点を同時に考慮する必要があります。
税務的に合理的でも、家族間の合意が得られなければ承継は進みません。また、従業員や取引先の不安を無視した承継は、事業そのものの不安定化につながります。税務は、これらの要素を調整するための材料の一つとして使うべきものです。

専門家をどう使うか

事業承継と税務は、経営者一人で判断できる領域ではありません。
税理士、公認会計士、金融機関、M&Aアドバイザーなど、関係する専門家は多岐にわたります。重要なのは、制度の説明だけでなく、経営者の意向や人生設計を踏まえて整理してくれる専門家と対話することです。複数の視点を得ることで、判断の精度は高まります。

結論

税務から逆算する事業承継とは、税金を最優先に考えることではありません。
税務を制約条件として整理し、その上で経営、人生、会社の将来をどう組み立てるかを考えることが、「失敗しない事業承継」につながります。制度に振り回されるのではなく、制度を理解したうえで主体的に選択する姿勢が、これからの中小企業経営には求められます。

参考

・日本経済新聞「M&Aは特別な手段ではない」PwCコンサルティング パートナー 久木田光明(2025年12月16日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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