税制改正で変わる「税の壁」 扶養と働き方に影響するポイントをわかりやすく整理する

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パートやアルバイト、フリーランスとして働く方にとって、「扶養の範囲内でいくらまで働けるのか」は関心の高いテーマです。いわゆる「年収の壁」は、税金・社会保険・家族の扶養の3つの制度が関係しており、しばしば混同されがちです。
2025年度の税制改正では、基礎控除や給与所得控除の見直しが行われたことで、いわゆる「税の壁」が大きく変わりました。本記事では、本人にとっての税負担の壁と、扶養者側の税の壁の双方から、ポイントを整理して解説します。

1 税の壁には「本人」と「扶養者」の2種類がある

年収の壁というと、一般的には「103万円」「130万円」といったラインが注目されます。しかし正確には、以下のように複数の基準があります。

  • 本人が所得税を負担し始める壁(旧103万円)
  • 家族が扶養控除を受けられなくなる壁(扶養者側の税の壁)
  • 社会保険の扶養から外れる壁(健康保険・年金)

働き方がパート・アルバイト・フリーランス・起業(法人化)であっても、所得が一定の基準を超えれば、扶養から外れる可能性があります。


2 2025年度税制改正で「税の壁」が大きく変更された

2025年3月31日に成立した税制改正法により、所得税の基礎控除と給与所得控除が大幅に見直されました。

(1)基礎控除の引き上げと段階的加算

  • 合計所得金額 2,350万円以下:基礎控除 58万円(従来48万円から10万円増)
  • 合計所得金額 655万円以下:基礎控除を最大+37万円の4段階で上乗せ
    • 上乗せ額:37万円、30万円、10万円、5万円
    • ※上乗せは居住者のみ
    • ※30万円・10万円・5万円は令和7年・8年分の時限措置

所得の低い層では控除額が大きく増え、非課税となる収入ラインが引き上げられました。

(2)給与所得控除の最小額を55万円→65万円へ

給与所得控除の最低保証額が10万円アップしたことによって、以下の点が大きく変わりました。

  • 本人が所得税を負担し始める壁(旧103万円の壁)
    →「160万円の壁」へ引き上げ

収入160万円以下であれば、所得税は発生しません(住民税は別途算定)。

(3)扶養者側の「税の壁」も変わる

給与所得者を扶養している親や配偶者にとっての壁も引き上げられました。

  • 扶養控除が外れる旧103万円の壁 → 123万円へ
  • 19歳以上23歳未満の場合:123万円超〜150万円以下なら特定親族特別控除で扶養控除は維持

学生アルバイトへの影響は特に大きく、年間150万円までは扶養者の税負担は増えません。


3 フリーランスの場合の「税の壁」

フリーランスは給与所得者とは異なり、収入から必要経費を差し引いた「事業所得」で判定します。

  • 事業所得95万円以下:所得税は非課税
  • 住民税:事業所得45万円以下が非課税

売上から仕入・交通費・通信費などの経費を差し引いた結果で判定されるため、給与所得者の壁とは異なるラインとなります。


4 社会保険の「130万円の壁」は今後見直しの可能性も

(1)130万円を超えると社会保険の被扶養者から外れる

向こう1年間の収入見込みが130万円以上になると、以下を自分で負担することになります。

  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料(給与所得者の場合)

一時的に手取りは減りますが、厚生年金に加入すると将来の年金額は確実に増えます。

(2)106万円の壁の「賃金要件」は2026年に撤廃予定

一定規模の企業では「106万円の壁」もありますが、
公布から3年以内の政令で定める日(2026年中)に賃金要件が撤廃される予定です。

(3)2023年10月から「2年間は被扶養者のまま」ルール

一時的な残業などで130万円を超えてしまっても、

  • 事業主との雇用関係があること
  • 事業主が収入増が一時的であることを証明

という条件で、連続2年間は社会保険上の被扶養者として扱われる制度が始まりました。


5 フリーランスの社会保険は経費にはできないが、控除は可能

フリーランスが負担する

  • 国民健康保険料
  • 国民年金保険料

などは必要経費にはできませんが、社会保険料控除の対象として所得から差し引くことはできます。


6 働き方を選ぶときは「税」「社会保険」「扶養」をトータルで見ることが大切

パート・フリーランス・起業など、働き方によって年収の壁の適用が変わります。
短期的な手取りだけで判断するのではなく、将来の年金額や税負担の変化も含めて、トータルで判断することが重要です。


結論

2025年度の税制改正で、基礎控除と給与所得控除が引き上げられたことにより、本人が所得税を負担し始めるラインや、扶養者の税負担が変わるラインが大きく見直されました。いわゆる「103万円の壁」は「160万円の壁」となり、扶養控除の壁も123万円に変わります。一方、社会保険の「130万円の壁」は引き続き重要であり、2026年には106万円の壁の賃金要件撤廃が予定されています。

働き方の自由度は広がりましたが、税と社会保険の制度は複雑です。短期的な手取りだけではなく将来の保障も踏まえて、ライフプラン全体の中で最適な働き方を選ぶことが重要だといえます。


出典

  • 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
  • 日本FP協会「トレンドWATCH『年収の壁と税制改正』」
  • 厚生労働省「被扶養者認定の見直しに関する通知」

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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