1. 改革の流れをもう一度
2025年秋、自民党と日本維新の会がまとめた連立政権合意書は、
税と社会保障を一体で見直す、大きな転換点となりました。
その中核にあるのが、次の4つの改革です。
- 消費税「食品2年ゼロ」構想
→ 家計支援と物価高対策の象徴。 - 租税特別措置(租特)の見直し
→ 政策効果の低い企業優遇を廃止。 - 第3号被保険者制度の見直し
→ 年金制度の公平化へ。 - 医療・介護保険の再編統合と金融所得の見直し
→ 負担の平準化と持続可能な社会保障へ。
この4本柱を通じて、政府が目指しているのは――
「企業優遇から家計重視へ」
「税の再配分による公平な社会」
への構造転換です。
2. なぜ「税と社会保障」を一緒に考えるのか
かつては、「税制は財務省」「社会保障は厚労省」と役所の管轄が分かれていました。
しかし、今やこの2つは切っても切り離せません。
なぜなら、
- 高齢化で社会保障費が毎年増え続けている
- その財源を支える税収が限界に近づいている
からです。
税だけでは足りず、社会保障の制度改革だけでも追いつかない。
だからこそ、「税の取り方」と「社会の支え方」を一体で再設計する必要があるのです。
3. 「公平な負担」と「安心の再分配」
この改革のキーワードは、ずばり 「公平性」 です。
- 第3号被保険者の見直し → 「保険料を払わずに年金をもらう」不公平を是正
- 租税特別措置の廃止 → 「企業だけが得をする」構造を是正
- 金融所得への保険料反映 → 「所得の種類で負担が変わる」ゆがみを是正
つまり、「誰もが応分に支え合う仕組み」をつくることが目的です。
そして、その財源をもとに、
- 食品の消費税ゼロなど家計支援
- 医療・介護の持続可能化
- 年金制度の安定化
を実現していく――。
それが、今回の「一体改革」の全体像です。
4. これから何が変わるのか
今後のスケジュールを整理すると、次のようになります。
| 年度 | 政府・与党の動き | 想定される変化 |
|---|---|---|
| 2025年度 | 制度設計の骨子をまとめる | 消費税ゼロ案・租特見直し・年金改革案が出そろう |
| 2026年度 | 実施・法改正開始 | 段階的に制度がスタート |
| 2027年度以降 | 運用・見直し | 家計・企業の実感が表れる時期 |
とくに2025年度は「改革の設計図」が描かれる重要な年です。
この時期の議論が、10年先の社会構造を左右します。
5. 生活者にとっての意味
一見すると、難しい政策議論のようですが、実は私たち一人ひとりの生活に直結しています。
- 食費・医療費・介護費・年金受取額…
- そして給与から天引きされる「社会保険料」…
それらすべてが、この改革の方向次第で変わります。
FP(ファイナンシャル・プランナー)や税理士の立場から見ると、
「家計設計を“税と社会保障の両輪”で考える時代」
が来たと言えるでしょう。
たとえば、
- 投資や副業の所得も社会保険料に影響する
- 年金の受け取り方で税負担が変わる
- 医療・介護の負担率が地域で違う
これらを理解して、トータルの生涯設計を立てることが求められます。
6. 改革の本質は「分かち合い」
税も保険も、本来は“みんなで社会を支える仕組み”です。
今回の一体改革の背景には、次のような現実があります。
- 高齢者1人を現役1.3人で支える社会
- 物価高で生活が厳しい現役世代
- 給付を維持するための財源不足
こうした中で、「誰かだけが得をする制度」を見直し、
“みんなで少しずつ負担を分かち合う”社会へ転換する――
それが、この改革の根底にある思想です。
7. まとめ ― 新しい“支え合い”の形へ
消費税ゼロ構想、租特見直し、年金改革、医療・介護再編、金融所得課税の是正。
これらは個別のテーマに見えて、実はひとつの方向につながっています。
「税の集め方」と「社会保障の使い方」を同時に変える。
この一体改革は、
“支え合いの再設計”であり、
“次世代へのバトン”でもあります。
これからの日本社会は、
「公平に負担し、安心して支え合う」
そんな新しいステージへと進もうとしています。
出典:2025年10月21日 日本経済新聞朝刊「消費税『食品2年ゼロ』視野」/厚生労働省『社会保障制度改革の方向性(2025年度版)』/財務省『税と社会保障の一体改革に関する基本資料』
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
