少子高齢化が進む日本において、社会保障費の増大は避けられない現実です。
医療、介護、年金といった給付は拡大を続け、その財源をどのように確保するかは、財政運営の核心的課題となっています。
これまで社会保障財源といえば、消費税や社会保険料が中心でした。しかし近年、「資産課税をもっと活用すべきではないか」という議論も見られます。
相続税をはじめとする資産課税は、社会保障財源としてどこまで機能し得るのでしょうか。
本稿では、その可能性と限界を整理します。
社会保障財源の構造
日本の社会保障財源は、大きく三つに分かれます。
・社会保険料
・公費(税)
・国債
公費の中核は消費税であり、社会保険料と並ぶ安定財源です。
一方、相続税は税収規模としては限定的であり、社会保障全体を支える主力財源とはいえません。
しかし、その役割は単純な金額比較だけでは測れません。
資産課税の特徴
資産課税には、所得課税や消費課税とは異なる特徴があります。
第一に、世代間移転に着目する税であることです。
第二に、保有資産の規模に比例する性格を持つことです。
第三に、累進性を設計しやすいことです。
社会保障は高齢世代への給付が中心です。その財源を資産に求めることは、世代間負担の調整という観点から一定の合理性を持ちます。
再分配機能との接点
社会保障と資産課税は、ともに再分配機能を持ちます。
社会保障は給付を通じて所得再分配を行います。
相続税は、資産移転に課税することで世代間格差を調整します。
両者は制度上は別ですが、機能的には接続しています。
資産課税を社会保障財源に充てるという発想は、再分配の整合性を高める方向ともいえます。
限界も明確である
しかし、資産課税を社会保障の主力財源とすることには限界があります。
第一に、税収の安定性です。相続税収は景気や資産価格に影響されやすく、消費税ほど安定的ではありません。
第二に、税基盤の規模です。相続税の課税対象は限定的であり、社会保障全体を賄う規模には達しません。
第三に、流動性の問題です。相続税は一時点で課税されるため、継続的財源としての性格は弱いといえます。
したがって、資産課税は補完的財源としての性格が強いと考えられます。
世代間負担の観点
社会保障制度は、現役世代の負担増が続く構造にあります。
社会保険料は主に現役世代が負担し、給付は高齢世代が中心となります。
その構造に対し、資産課税は高齢世代に偏在する資産に一定の負担を求める仕組みです。
世代間公平の観点から、資産課税を一定程度活用することには政策的意義があります。
もっとも、その範囲と水準は慎重に設計する必要があります。
国際的視点
国際的には、資産課税の強化と緩和の両方向の動きが存在します。
一部の国では相続税を廃止し、他の税目で補う選択をしています。
一方で、富裕層課税を強化する議論も活発です。
資本移動が自由化された環境下では、資産課税の設計は国際競争力とも関係します。
社会保障財源としての資産課税は、国内事情だけでなく国際環境との整合性も必要です。
現実的な位置付け
現実的には、相続税を社会保障の中心財源とすることは困難です。
しかし、社会保障財源の一部として位置付けることは可能です。
評価制度の整備や課税ベースの適正化は、税収の安定化につながります。
貸付用不動産評価見直しも、その一環と見ることができます。
資産課税は、社会保障財源の補完的柱として機能する余地があります。
結論
資産課税は、社会保障財源として一定の役割を果たし得ます。
しかし、それは補完的役割にとどまります。
社会保障の持続可能性は、消費税・社会保険料・資産課税など、複数の財源の組み合わせによって支えられます。
重要なのは、世代間公平と制度安定性の均衡です。
貸付用不動産評価見直しは、資産課税の実効性を高める一歩です。
社会保障と資産課税の関係を総合的に捉え、制度全体の整合性を見極めることが求められます。
参考
・自由民主党・日本維新の会 令和8年度税制改正大綱
・財産評価基本通達
・最高裁令和4年4月19日判決 解説資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
