社会保障を考えるなら「人口構造」から読み解くべき理由 将来人口推計の精度と従属人口指数から見える日本社会の行方

FP

社会保障の議論では「財源」や「制度改革」が注目されがちですが、実は最も正確に読める将来情報は人口動向です。国の財政、年金・医療・介護といった社会保障の持続性は、どれだけ資金があるかよりも「どれだけ支える人がいて、どれだけ支えられる人がいるのか」という人口構造に強く左右されます。

将来人口の予測は不確実だと考えられがちですが、実は他の経済指標に比べて圧倒的に精度が高く、社会保障を考えるうえで欠かせない“羅針盤”です。本稿では、人口推計の特徴と社会保障の負担構造の鍵となる「従属人口指数」を解説し、日本がこれから直面する課題を整理します。

1. 将来人口推計は「予言」ではなく、高精度の“計算”

人口推計の精度は驚くほど高く、例えば国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が1997年に作成した推計は、2025年人口について誤差わずか 1.7% でした。

ここまで精度が高いのは、人口の大部分を占める成人・高齢者の多くが、将来にわたって一定期間生存すると分かっているためです。出生数や死亡率には変動がありますが、短期的には大きくぶれません。そのため、経済成長率や物価の将来予測に比べて、人口の予測は極めて安定した指標になります。

30年後の経済指標を1~2%以内の誤差で当てることは不可能ですが、人口はそれが可能なのです。


2. 社会保障は「賦課方式」。年齢構成が支出と負担を決める

日本の公的年金・医療・介護などの社会保障は基本的に「賦課方式」で運営されています。これは、現役世代が支払う保険料や税を財源として、その時々の高齢者や子どもに給付する仕組みです。

賦課方式では、人口総数よりも「年齢構成」が重要になります。
そのバランスを見る指標が 従属人口指数 です。

  • 従属人口指数(Dependence Ratio)
    現役世代(15~64歳)100人が、
    ・65歳以上(高齢者)
    ・15歳未満(年少人口)
    を何人支えているかを示す指標。

指数が高いほど、現役世代1人あたりの負担が重くなります。


3. なぜ日本の従属人口指数は急上昇しているのか

日本は1995年以降、出生率がほぼ横ばいで、若い世代の年齢構成は長期的に安定していました。しかし、従属人口指数は急上昇しています。その理由は 過去に2度のベビーブームがあったため です。

大きな人口の山がそのまま“高齢者としての山”となるため、今後しばらくは指数の上昇が避けられません。

  • 2024年の従属人口指数:68
  • 2045年には80台後半に上昇見込み

これは、現役世代100人が85〜90人の高齢者・子どもを支える構図です。


4. 安定期はいつ訪れる?鍵は出生率にあり

日本の人口構造は、ベビーブーム世代の高齢化が一巡した後、出生率次第で安定に向かいます。
最新の推計(社人研2023年推計)では、どのシナリオでも 2080年代後半に指数は安定期に入る とされています。

出生率によって負担水準は大きく異なります。

●出生率が回復する場合(中位:2070年に1.36)

  • 従属人口指数は 97前後で安定
    → 負担は重いが“天井”が見える水準

●出生率が低迷し続ける場合(低位:2070年に1.12)

  • 120まで上昇
    → 負担はさらに重くなる

平均寿命の上昇も指数に影響しますが、影響度は出生率より小さく、差は約4ポイントにとどまります。


5. これからの日本が直面する課題

短期と長期で必要な対応は大きく異なります。

■【短期】ベビーブーム世代の高齢化への対策

2040年前後に向けて指数が急上昇する局面では、

  • 医療・介護の効率化
  • 働ける高齢者の就業支援
  • 社会保障の給付と負担の見直し
  • 外国人材の受け入れ
    など、出生率とは別次元の政策が求められます。

■【長期】出生率の維持・回復が不可欠

将来の負担水準は出生率次第です。
現状(1.15)を維持できるか、わずかでも回復させられるかで、次世代の負担は大きく変わります。


結論

人口は、日本の社会保障の持続性を判断するための最も信頼できる指標です。そして、現役世代がどれだけの高齢者・子どもを支えるのかを示す従属人口指数は、その中心にある概念です。

短期的には第2次ベビーブーム世代の高齢化によって指数は急上昇し、負担は確実に重くなります。この局面を乗り越えるには、少子化対策だけでは不十分であり、労働・医療・介護制度の改革など多面的な対応が必要です。

一方で長期的には、出生率の維持・回復が従属人口指数の安定に直結します。人口動向から目を背けないことが、将来の社会保障を設計するうえで最も重要な視点になります。


出典

・国立社会保障・人口問題研究所「将来人口推計」
・日本経済新聞(2025年11月25日付)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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