社会保障の未来構想2026 ― 成長と包摂の両立

FP

日本の社会保障は、戦後の復興期から「支え合いの仕組み」として国民の暮らしを守ってきました。
しかし、少子高齢化、人口減少、地域格差、そして財政制約――。
その前提は大きく変わりつつあります。

高市早苗政権が掲げる「責任ある積極財政」は、成長分野への投資を通じて経済を立て直し、持続可能な社会保障を再構築するという挑戦でもあります。
本稿では、制度改革と共生社会の両面から、2026年に向けた“社会保障の未来像”を描きます。


第1部 社会保障再設計 ― 制度の持続と公平をめぐる5つの論点

① 「ほぼ市販薬」保険外しと医療費の線引き

OTC類似薬(市販薬と成分が同じ処方薬)の保険適用を見直す議論が進んでいます。
患者負担を増やす動きに反発もありますが、医療費膨張を抑えるには避けて通れないテーマです。
財務省は「費用対効果に応じた公的負担」を求めており、今後は“何に税金を使うか”の選別が問われます。

② 所得のある高齢者はどこまで負担すべきか

高齢者医療費の負担率引き上げは、世代間の公平を意識した改革です。
一方で、年金生活者にとっては「これ以上の負担増は厳しい」という切実な声も多くあります。
現役世代の可処分所得を守るための改革であっても、生活の実感と合わなければ社会的合意は得られません。
公平性とは、数字の問題ではなく“納得できる分かち合い”の仕組みを意味します。

③ 外来受診と処方の「適正化」 ― 医療の効率と安心の両立

通院回数の多さや慢性疾患の定期処方など、日本の医療には“過剰受診”の課題があります。
一方で、患者にとって「医師に会うこと」は安心の源でもあります。
リフィル処方や電子処方箋の導入、オンライン診療の活用など、医療の効率化が進む中で、
“人とのつながり”をどう残すかが次の課題です。

④ 「仕送り型」から「共助型」へ ― 世代間の公平を再構築

現役世代の負担が重くなる一方で、高齢者の中にも「支えられるだけではいたくない」という意識が広がっています。
企業もまた社会保障の一翼を担い、雇用や賃上げと負担の両立を模索しています。
世代間の支え合いを「一方向」から「循環型」へ――。
支える・支えられるを越えた“共助の再設計”が求められています。

⑤ 社会保障財源の再設計 ― 責任ある積極財政との両立

高市政権の「責任ある積極財政」は、成長分野への投資を通じて税収を増やし、社会保障を支える循環モデルを目指します。
税と保険料の境界を整理し、負担能力に応じた再分配を強化すること。
そして、医療・介護などの歳出は「削減」ではなく「重点化」へ。
“成長が社会を支え、社会が成長を支える”という双方向の構造が、持続可能な社会保障の鍵です。


第2部 共生社会と社会保障 ― 包摂と支え合いの未来

① 外国人と社会保障 ― 多様化する支え合いの現場

外国人労働者の増加により、社会保障の枠組みが試されています。
未納問題、言語の壁、制度の複雑さなど、課題は多岐にわたります。
一方、地域レベルでは医療通訳や生活支援NPOの活動が広がり、「共に支える社会」の芽が生まれています。
“ここで暮らすすべての人”を包み込む社会保障こそ、共生社会の基礎です。

② 地域包括ケアの再構築 ― 高齢・子育て・就労をつなぐ仕組み

かつて高齢者中心だった地域包括ケアは、今や多世代型へと変化しています。
高齢者が子どもを見守り、若者が高齢者のデジタル支援を行う――世代を超えた“相互扶助”の仕組みが芽生えています。
行政・企業・地域住民が協働し、介護・就労・育児を一体で支える地域モデルこそ、共生社会の原動力です。

③ 医療アクセス格差と地域医療の再編

都市と地方の医師偏在が進み、地域によっては出産も救急も難しい状況が生まれています。
一方で、オンライン診療や訪問看護の発展が、新しい医療アクセスの形を生み出しています。
「医療を減らす」ではなく、「つなぐ」方向への再編。
地域と生活を支える医療の再構築が始まっています。

④ 障害・就労・教育の連携支援 ― 真のインクルーシブ社会へ

教育・就労・福祉の連携不足が、障害のある人の社会参加を妨げています。
特別支援学校と企業・地域をつなぐキャリア支援、ジョブコーチ制度の活用など、現場から新しい動きも始まっています。
支援を「守る」から「共に創る」へ――。
切れ目のない支援が、インクルーシブ社会の基盤となります。

⑤ 共生社会の財政と倫理 ― 持続可能な包摂モデルを描く

包摂社会を支えるには、「誰を、どのように支えるか」という倫理的な選択が避けられません。
支援の優先順位を透明化し、国民全体で合意を形成する仕組みが必要です。
また、介護・医療・保育など“支える側”への財政投資を強化することが、制度の持続性を高めます。
経済成長と社会包摂を一体で考える――それが「責任ある積極財政」の真の意義です。


結論

2026年に向けた社会保障改革は、制度を変えるだけではありません。
「成長」と「包摂」という二つの価値をどう両立させるか――。
それは、国の経済モデルであると同時に、私たち一人ひとりの生き方の選択でもあります。

高市政権の掲げる「責任ある積極財政」は、社会保障を“支出”ではなく“未来への投資”と捉える試みです。
医療、福祉、教育、地域、そして企業が一体となり、支え合う社会を築くこと。
その先にこそ、成長と安心が両立する“新しい日本型福祉国家”の姿があります。

社会保障の未来は、政治だけでなく、私たち全員の参加によって形づくられます。
支え合いを分担ではなく希望として語れる社会――その実現に向けて、いま大きな一歩が問われています。


出典

・日本経済新聞「社会保障5つの論点」シリーズ(2025年11月)
・日本経済新聞「共生社会と社会保障」シリーズ(2025年11月)
・厚生労働省「全世代型社会保障構築会議」資料
・財務省「財政制度等審議会」報告
・内閣府「共生社会政策の方向性に関する中間整理」
・総務省「地域共生社会の推進状況」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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