社会保険料引き下げは実現するのか 現役世代と高齢世代の負担をどう再設計するか

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社会保険料の負担が重い、という声はここ数年で一段と強まっています。特に現役世代にとっては、手取り収入が伸びない中で保険料だけが増え続けているという実感があるのではないでしょうか。
こうした状況の中、政権は社会保険料の引き下げを掲げ、医療・介護を中心とする社会保障改革に取り組む姿勢を示しています。ただし、その実現には高齢者負担の見直しという避けて通れない課題が横たわっています。

本稿では、社会保険料引き下げをめぐる現状と論点を整理し、制度改革が抱える構造的な難しさについて考えていきます。


現役世代に偏る社会保険料負担

この20年ほどで、社会保険料の負担構造は大きく変化しました。40~60代の世帯では、月額で見ても数万円規模の負担増となっています。一方で、高齢世代の保険料や自己負担の増加は相対的に緩やかです。

背景にあるのは、高齢者医療費を現役世代が支える仕組みです。75歳以上の医療制度では、自己負担割合が原則1割とされ、公費や現役世代の保険料による「仕送り」によって制度が支えられています。
少子高齢化が進む中で、この構造を維持し続けることが難しくなっている点は、もはや否定できません。


「社会保険料を下げる」ための選択肢

社会保険料を引き下げるためには、単に給付を削るか、負担をどこかに移すしかありません。現在議論されている主な選択肢は、大きく分けて次の三つです。

第一に、高齢者の医療費自己負担の引き上げです。年齢ではなく所得や資産に応じて負担割合を見直すことで、給付費の増加を抑える考え方です。
第二に、医療制度そのものの効率化です。OTC類似薬への自己負担拡大や過剰受診の抑制などが代表例です。
第三に、保険料以外の財源で社会保障を支える方法、すなわち税財源への依存を高める選択です。

しかし、いずれの選択肢にも明確な「痛み」が伴います。


高齢者負担見直しの「壁」

高齢者の自己負担引き上げは、理屈の上では公平性の回復につながります。実際、一定以上の所得や資産を持つ高齢者に対して、現役世代と同程度の負担を求めることは合理的です。

ただし、政治的には極めて難しいテーマです。医療と介護の負担が同時に増えることへの反発は強く、過去にも何度も先送りされてきました。
また、高齢者医療の自己負担割合を単純に引き上げると、公費負担の構造や保険料財源との関係で、かえって現役世代の負担が増える可能性もあります。

「高齢者だから軽くする」「現役だから重くする」という年齢区分型の発想自体が、すでに限界に来ていると言えるでしょう。


医療費削減だけでは足りない現実

医療費を削減すれば社会保険料が下がる、という期待は根強くあります。しかし、実際に積み上げられている改革効果は限定的です。
薬価改定や一部制度見直しを含めても、保険料を大きく引き下げる水準には届いていません。

さらに、少子化対策の財源として、医療保険料に上乗せされる新たな負担も始まります。改革によってこれを相殺し、なおかつ保険料を引き下げるというのは、簡単な話ではありません。


問われるのは「制度への信頼」

社会保障制度は、国民が「将来も続く」と信じられるからこそ成り立ちます。
負担の増加だけが続き、改革が先送りされる状態が続けば、現役世代の制度不信は一段と強まるでしょう。

重要なのは、誰か一方にだけ負担を押し付けるのではなく、所得や資産、世代間のバランスを丁寧に組み直すことです。そのためには、短期的な選挙への配慮よりも、制度の持続可能性を優先する姿勢が求められます。


おわりに

社会保険料の引き下げは、多くの人にとって切実なテーマです。しかし、その実現には、高齢者負担の見直しや給付と負担の再設計という、避けて通れない課題があります。
「下げるか、下げないか」ではなく、「どうすれば将来世代まで制度を維持できるか」という視点での議論が不可欠です。

社会保障改革は時間のかかる取り組みです。だからこそ、先送りではなく、現実的な選択を積み重ねていくことが、今の政治に問われているのではないでしょうか。


参考

・日本経済新聞「社会保険料下げ、政権に試練」
・厚生労働省 社会保障審議会 医療保険部会 資料


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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