確定申告で迷わないための個人国際税務入門 第6回(保存版)個人国際税務における確定申告チェックポイント総整理

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

個人の国際税務に関する確定申告では、「一部だけを知っている」状態が、かえって申告誤りを招きやすくなります。
海外給与、海外投資、送金の有無など、個々の論点を点で理解するのではなく、全体の流れを整理して判断する視点が重要です。

本稿では、これまでの連載内容を踏まえ、確定申告時に確認すべきポイントを体系的に整理します。


最初に確認すべきは「居住区分」

すべての判断の起点となるのが、居住区分の確認です。

  • 非永住者以外の居住者
  • 非永住者
  • 非居住者

どの区分に該当するかによって、課税所得の範囲は大きく異なります。
所得の種類や金額を検討する前に、その年のどの期間に、どの区分に該当していたかを時系列で整理することが不可欠です。


年の途中で区分が変わっていないか

入国・出国、海外赴任・帰任などがあった場合、1年を通じて同一の居住区分とは限りません。

  • 居住者期間
  • 非居住者期間
  • 非永住者期間

が混在するケースでは、期間ごとに所得を切り分けて考える必要があります。
この整理を怠ると、課税対象の過不足が生じやすくなります。


所得の「発生地」と「内容」を整理する

次に確認すべきは、所得の内容と発生地です。

  • 給与所得
  • 株式報酬
  • 配当・利子
  • 株式譲渡益
  • FXなどの雑所得

それぞれについて、

  • 日本での役務か、海外での役務か
  • 国内源泉か、国外源泉か

を整理します。
支払者が日本か外国かだけで判断しないことが重要です。


非永住者の場合は「支払」と「送金」を確認

非永住者が関与する場合、次の点が特に重要になります。

  • 国外源泉所得であっても、国内払いがないか
  • 国外から日本への送金が行われていないか

「海外口座に置いたまま」という理由だけで課税関係がないとは限りません。
資金の流れを具体的に確認する必要があります。


海外金融取引は国内取引と分けて考える

海外証券口座や海外金融業者を通じた取引については、

  • 自動的な税務処理は行われない
  • 年間取引報告書が存在しない場合が多い

という前提で考える必要があります。

円換算方法、損益通算の可否、外国税額控除の検討など、
国内取引とは異なる確認事項がある点を意識することが重要です。


調書制度・情報把握を前提に考える

海外給与や株式報酬については、調書制度により税務当局が情報を把握しているケースがあります。

「海外の話だから分からない」という前提で申告を省略するのは、現実的ではありません。
申告内容と調書内容の整合性を意識した整理が必要です。


確定申告時の実務チェックポイント

実務上は、次のような順序で確認すると整理しやすくなります。

  1. 居住区分と期間の確定
  2. 所得の種類ごとの洗い出し
  3. 所得ごとの発生地・対応期間の整理
  4. 非永住者の場合は送金・国内払いの有無確認
  5. 海外金融取引の円換算・損益通算の可否確認
  6. 外国税額控除や必要書類の検討

この流れで確認することで、判断漏れを防ぎやすくなります。


結論

個人の国際税務における確定申告では、
一つひとつの論点よりも、全体をどう整理するかが重要です。

居住区分を起点に、期間・所得内容・資金の流れを順に確認していくことで、
複雑に見える国際税務も、実務として整理可能なものになります。

本シリーズが、確定申告に向けた実務整理の一助となれば幸いです。


参考

  • 東京税理士協同組合教育情報事業
    「全国統一研修会 令和7年分確定申告に向けて 個人の国際税務」研修資料

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました