石破首相退陣と「社保・税一体改革」──再び仕切り直しへ

人生100年時代
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7日に石破茂首相が退陣を表明したことで、日本の社会保障改革は再び「仕切り直し」となりました。
少子高齢化が進み、医療や介護費用の膨張が続く中、次の政権にとっても「給付と負担の見直し」は避けて通れない課題です。

1.なぜ「一体改革」が必要なのか

2012年、当時の民主党政権下で実現した「社会保障と税の一体改革」は、消費増税を柱に、社会保障制度の安定化を目指したものでした。
しかし、その後10年あまりで、社会保障給付費は1.3倍に膨張し、2025年度予算では140兆円を超える水準に達しています。
さらに2040年度には190兆円に達する可能性があるとされ、今の仕組みでは持続困難であることは明らかです。

2.負担構造の歪み:税か保険料か

日本の国民負担率(税と社会保険料の合計)は48.4%で、OECD平均よりは低めです。
ただし内訳を見ると、社会保険料の比率は19.0%とOECD平均(14.1%)より高く、税よりも保険料で支える構造が進んでいます。

つまり、歴代政権が「増税は反発が強い」として避け、その代わりに社会保険料の引き上げで対応してきた結果、現役世代の可処分所得を圧迫する流れを強めてきたのです。これは賃上げや消費の拡大を妨げる要因にもなっています。

3.各党の改革案:負担と給付の見直し

野党を含めた具体的な見直し案も出ています。

・日本維新の会:OTC類似薬(市販薬で代替できる薬)を保険適用から外し、1人あたり年6万円の保険料軽減を目指す。

・国民民主党:75歳以上の医療費窓口負担を原則2割へ引き上げ、現役世代の負担を軽減する。

政府側も、「現役並み所得」の基準見直しや、介護保険2割負担の拡大などを示してはいますが、具体的な時期や実行性は依然として不透明です。

4.政治主導が不可欠

現実には、一度決めた改革でさえ実現が遅れています。
例えば、高額療養費制度の自己負担限度額引き上げは今年8月に予定されていましたが、見送られました。
また、年末には診療報酬改定が控えており、インフレ下での調整は一層難航が予想されます。

社会保障は税金・保険料・自己負担で成り立つ仕組みです。
給付を増やすならどこかを上げなければならず、全体の負担を抑えるなら給付を減らすしかありません。
借金頼みを続ける余地も、金利上昇局面では限られています。

5.今後の展望:国民的な合意形成が鍵

厚労省関係者が指摘するように、「持続可能な社会保障のためには、国民的な議論が欠かせない」状況です。
一方で、ポピュリズム的な「減税論」が夏の参院選では強調され、根本的な改革議論は後景に追いやられました。

社会保障制度を責任ある形で次世代に引き継ぐには、与野党を超えた協議と合意形成の仕組みが不可欠です。
石破首相が呼びかけた超党派協議体は霧消する危険がありますが、その必要性はむしろ一層高まっているといえます。

6.まとめ:私たちの選択が未来を決める

医療や介護は私たち全員がいずれ関わる制度です。「給付を増やせ」「負担を減らせ」という都合の良い選択肢は存在しません。
負担の在り方を公平に設計し、将来世代にも持続可能な仕組みを残すことが、これからの政治に求められています。

社会保障と税の「一体改革」が再び俎上に載るとき、私たち有権者もその方向性を見極める力が問われています。

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、引き続きよろしくお願いします。

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