終身保険は、相続対策の定番商品として長年利用されてきました。
死亡時に確実に保険金が支払われること、現金で受け取れることから、相続税の納税資金や遺族の生活保障として重宝されてきた経緯があります。
一方で、人生100年時代が現実のものとなり、
「相続」だけでなく「認知症」や「超高齢期の資金管理」まで含めて備える必要性が高まっています。
終身保険は、こうした課題にどこまで対応できるのでしょうか。
相続対策としての終身保険の基本的な役割
相続対策における終身保険の代表的な役割は、次の点にあります。
- 死亡保険金が確実に現金で支払われる
- 受取人を指定できるため、分割協議を経ずに受け取れる
- 一定額まで相続税の非課税枠がある
特に、不動産など換金しにくい資産が多い家庭では、
「納税資金をどう確保するか」という問題への有効な手段として使われてきました。
この点については、今後も終身保険の基本的な価値は変わらないといえます。
認知症対策として見た終身保険の限界
一方で、認知症対策という観点から見ると、終身保険には注意点もあります。
認知症が進行すると、以下のような問題が生じます。
- 保険の見直しや解約、受取人変更ができなくなる
- 医療費や介護費用のために資金化したくても、手続きが進まない
- 家族が代わりに判断できず、資金が「凍結」状態になる
終身保険は、あくまで「死亡時」に機能する商品です。
生前の判断能力低下に対して、直接的な解決策を提供するものではありません。
長生きするほど浮き彫りになる課題
終身保険は「いつか必ず支払われる」ことが前提の商品です。
しかし、支払われる時期が90歳なのか、105歳なのか、あるいは110歳なのかで、
家族が直面する課題は大きく変わります。
長寿化が進むほど、次のようなズレが生じやすくなります。
- 相続対策として用意した資金が、何十年も先まで使えない
- 介護・医療・施設入居など、生前に必要な資金とのバランスが崩れる
- 「相続のための保険」が、本人の老後資金を圧迫する
終身保険は万能ではなく、使いどころを誤ると、かえって不自由さを生むこともあります。
終身保険を活かすための整理の視点
人生100年時代においては、終身保険を単体で考えるのではなく、
次のような視点で整理することが重要です。
- 相続対策は「死亡後」、認知症対策は「生前」の問題である
- 終身保険は「渡すお金」、生活資金は「使うお金」と分けて考える
- 判断能力があるうちに、全体像を設計しておく必要がある
終身保険は、「最後に確実に残すお金」として位置づけることで、本来の強みを発揮します。
他の制度との組み合わせが前提になる
認知症対策や超高齢期の資金管理まで考えると、
終身保険だけで完結する設計は現実的ではありません。
- 生前の資金管理の仕組み
- 判断能力低下時の代理手段
- 介護や医療に使える流動性資金
こうした要素と組み合わせて初めて、終身保険は「相続対策の一部」として機能します。
結論
終身保険は、今も相続対策の有力な選択肢であることに変わりはありません。
しかし、長寿化が進む中で、その役割は以前よりも限定的かつ戦略的に考える必要があります。
相続だけを見て加入するのではなく、
認知症や超高齢期の生活まで含めた全体設計の中で、
終身保険を「どこに置くのか」を考える時代に入っています。
人生100年時代の保険選びは、
「一生涯続く商品」ではなく、「一生涯をどう設計するか」という視点が欠かせません。
参考
・日本経済新聞「終身保険『108歳超え』に備え 大手生保、契約者長寿化で商品見直し」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
