病気やケガで働けなくなったときの安心を ― 団体長期障害所得補償保険(GLTD)の広がり

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近年、企業の福利厚生の一つとして「収入補償保険(団体長期障害所得補償保険=GLTD)」の導入が広がっています。
損害保険大手4社のGLTD保険料収入は、2024年度に420億円と6年間で7割増。毎年1割ずつ伸びるという、保険商品としては異例の成長を見せています。

なぜいま、収入補償保険に注目が集まっているのでしょうか?


GLTDとはどんな保険?

GLTDは、従業員が病気やケガで長期間働けなくなったときに、収入の一定割合を補償する制度です。

  • 会社が保険会社と契約し、従業員を一括でカバー
  • 報酬の50%などを最長で定年まで補償
  • 退職後も補償が続くケースもあり安心

会社が負担して全従業員を対象にする場合もあれば、個別に上乗せできるプランもあります。


伸びている理由① 雇用の流動化

かつての日本型雇用は「終身雇用」「勤続年数が長いほど手厚い福利厚生」でした。
しかし、転職が一般化する今、勤続年数に応じた制度では十分に備えられないケースが増えています。

GLTDであれば「入社したばかり」「勤続数年」でも補償を受けられるため、転職者にとって魅力的。企業にとっても採用力を高める武器になります。


伸びている理由② 健康経営と人的資本の重視

2023年から大企業に「人的資本開示」が義務化されました。
企業が従業員の健康や働きやすさに投資しているかどうかが、社会的評価や投資判断に直結します。

GLTDを導入すれば、従業員の安心につながるだけでなく、経済産業省の「健康経営優良法人認定制度」の評価項目にもプラス。企業価値向上の一助にもなります。


保険会社の工夫と連携サービス

各社はGLTDの販売強化に取り組んでいます。

  • 東京海上日動:健康診断の再検査を促す制度を導入した企業に保険料を割引
  • 損保ジャパン:楽天証券のNISA口座と連携し、休職中も積立投資を継続できる仕組みを提供
  • 三井住友海上・あいおいニッセイ:ストレスチェックを提供し、メンタル面をサポート

単なる保険ではなく「予防」「資産形成支援」と組み合わせる動きが広がっています。


税理士・FPの視点から見たポイント

GLTDは、従業員にとっては「働けないときの生活費の安心」、企業にとっては「採用力強化・健康経営アピール」と双方にメリットがある制度です。

  • 個人加入の所得補償保険と比べ、企業団体契約なら保険料が割安
  • 所得税・社会保険料の観点でも、会社負担で導入すれば従業員の負担軽減につながる
  • 福利厚生制度と重複しないよう設計することが重要

特に「転職を考える世代」や「持病のリスクが気になる働き盛り世代」にとっては安心材料になりやすく、企業と従業員の双方にとってWin-Winの仕組みと言えます。


まとめ

  • GLTDは病気やケガで働けなくなったときの収入を守る制度
  • 雇用の流動化と健康経営の流れで導入企業が増加
  • 保険会社も「予防・投資支援・メンタルケア」といった付加価値を提供
  • 税務・社会保険の面からも導入メリットがある

これからの時代、企業にとって「給与やボーナス」だけでなく「もしものときの安心を提供できるか」も重要な採用・定着の要素になりそうです。


👉 次回は、個人が自分で加入できる「所得補償保険」と企業導入型GLTDの違いや、税制上の取扱いについて整理してみます。


(参考 2025年9月9日付 日経新聞朝刊)

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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