――シリーズ「東京の人口増、その9割が高齢者だった」第5回
これまでの連載では、東京の人口増加の裏にある「高齢者の急増」と、それに伴う「介護人材不足」や「外国人労働者の活用」について見てきました。
最終回となる今回は、読者である私たち一人ひとりが「生活者」としてできる備えに焦点を当てていきます。東京の高齢化は、統計上の出来事ではなく、いずれ自分や家族に直結する現実だからです。
1. 「健康寿命」を意識すること
まず大前提として、介護が必要になる時期をできるだけ遅らせることが最大の備えになります。
そのために重要なのが「健康寿命を延ばす」ことです。
- 食生活の見直し:塩分や糖分を控えめにし、野菜や魚を積極的にとる
- 適度な運動:ウォーキングやストレッチを日課にする
- 定期的な検診:生活習慣病の早期発見につながる
- 社会参加:趣味や地域活動に関わり、孤立を防ぐ
医学的にも、心身の健康を保つことで介護が必要になる時期を数年遅らせることができるとされています。
2. 介護保険制度を理解する
日本には「介護保険制度」という仕組みがあります。40歳になると保険料を支払い始め、65歳以上になれば原則として介護サービスを利用できるようになります。
ただし、
- どんなサービスが受けられるのか
- どのくらい自己負担があるのか
- 申請から利用開始までの流れはどうなっているのか
を知らないまま高齢期を迎える人も少なくありません。
地域包括支援センターは、各自治体に設置されていて、介護に関する相談窓口になっています。自分や家族の将来を考えたとき、一度は話を聞いておくと安心です。
3. 経済的な備え ― 介護費用を家計に組み込む
介護にはお金がかかります。厚生労働省の調査によると、介護が始まってから亡くなるまでにかかる費用の平均は、自己負担分だけで約500万円といわれています。
もちろん実際の額は人によって異なりますが、家計設計をする際に「老後の生活費+介護費用」を見込んでおくことは重要です。
- 公的介護保険を基本に
- 民間の介護保険や医療保険で補うかどうか
- 預貯金や資産をどう取り崩していくか
ファイナンシャル・プランナーに相談するのも有効です。
4. 家族との話し合いを早めに
介護は「ある日突然」始まります。親が倒れた、認知症の症状が進んだ、そんなときに慌てて話し合うと、家族間で意見がぶつかることも少なくありません。
だからこそ元気なうちから、次のようなテーマについて話しておくことが大切です。
- 介護が必要になったら誰が中心で関わるか
- 施設か在宅か、本人はどう考えているか
- 財産や費用負担をどう分担するか
事前に方向性を共有しておくだけで、後のトラブルは大きく減らせます。
5. 外国人介護職員との共生を理解する
これからの東京では、外国人介護職員に支えられる機会が確実に増えます。
言葉や文化の違いに戸惑うこともあるかもしれませんが、彼らもまた地域で生活し、私たちを支える大切な存在です。
- 積極的にコミュニケーションをとる
- 相手の文化や背景に関心を持つ
- 「お互いさま」の意識を持つ
そうした姿勢は、地域全体を安心して暮らせる場所にしていく力になります。
6. 地域とのつながりを持つ
高齢期を迎えたとき、「地域でのつながり」があるかどうかは生活の安心度に大きく関わります。
- 町内会や自治体のイベントに参加する
- ボランティアや趣味のサークルで人と関わる
- 地域包括支援センターや民生委員と顔をつないでおく
いざ介護が必要になったとき、こうしたつながりが「孤立」を防ぎ、スムーズな支援につながります。
まとめ
東京の高齢化は、今後避けられない現実です。
- 高齢者の急増
- 介護人材の不足
- 外国人労働者の受け入れ
こうした社会の大きな動きを前に、私たち一人ひとりができることは決して小さくありません。
- 健康寿命を意識して生活習慣を整える
- 介護保険制度を理解しておく
- 家計に介護費用を組み込む
- 家族で早めに話し合う
- 外国人介護職員と共生する意識を持つ
- 地域のつながりを大切にする
これらはすべて「明日の自分や家族の安心」につながる備えです。
シリーズを通じて見てきたように、東京の高齢化問題は社会全体の課題であると同時に、私たち一人ひとりの生活そのものの課題でもあります。
「老後に備える」という言葉は漠然と聞こえるかもしれません。ですが、一歩ずつ行動に移すことで、未来の不安は確実に小さくしていけます。
📌 参考:
東京一極集中の実相(2) 人口増内訳、高齢者が9割(日本経済新聞、2025年10月1日付)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91639170Q5A930C2L83000/
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
